P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

クルーグマンのブログ:ニューディール経済学

今朝、マンキュ−のブログのエントリーを訳しましたが、クルーグマンがそのエントリーに答えるかのようなエントリーをアップしていました。クルーグマンのエントリーはルーズベルト大統領のニューディール政策についての評価に関するものなんですが、オバマにリベラル派がニュー「ニューディール」政策を期待している今、1930年代のニューディール政策の評価は歴史的な興味にとどまらず、現代の経済政策形成に関わってくるわけです。なので、色々なブログで関連のエントリーがアップされています(経済系ではMarginal Revolution(これこれ)やEconomist's view)。で、クルーグマンも書いてるわけですね。


ニューディール経済学  ポール・クルーグマン

最近は、誰もが皆、新しいニューディールについて語っている*1−そして、予想される通り、FDR*2を憎む連中*3が行動を開始している。いつものようにFDRは実際には大恐慌を悪化させたのだと触れ込みながら*4。(右派の連中は、当時、FDRのことを"That man"と呼んでいた。今、オバマは"that one"と呼ばれている。興味深い。)
Eric Rauchwayがその事について反論している。基本的に、反FDR論のデータは、(a)公共事業促進局(WPA)に雇われていた人達を失業中と数える(彼らは給料をもらって、今日まで使われている公共投資の建造物を作っていたのにもかかわらず)および (b)常に1938年に注意を集中させる事から成り立っている−−その年にはそれまでの4年間の回復の深刻な反動から景気が落ち込んでいたのだ。
さて、議論をはっきりさせる為に、私は二つの図をだしたいと思う。どちらもEricのものとは違うものだ。
最初は、1929年から1941年までの実質GDP(大数表示)とトレンド線だ。(これは雇用数に関するナンセンスに関わらなくてすむようにする為だ)。1938年の後退までに、かなりの部分のGDPギャップが解消された事がわかると思う。しかし全てがではなかった。

さて、この不完全な回復から「呼び水政策」、つまりケインジアンの財政政策は効果的でないと結論したくなるかもしれない。その結論の問題は、ニューディールはケインズ政策ではなかったということだ。きちんと計測すると、つまり、景気循環による影響を調整した財政赤字で計ると、財政政策はわずかに景気拡張的であったに過ぎなかった。すくなくとも不況の深刻さと比べると。Brad DeLong(PDF)が紹介しているCary Brownの推計によると、

財政拡張はGDPの3%近くに過ぎない−−42%もの生産ギャップがある時にはたいした規模ではない。もしケインズ経済学が存在していたら、FDRはもっとケインジアンであったかも知れない−−ただ一般理論は1936年まで出版されなかったのだ。また、1937−38年にはFDRは”堅実”な事を行い、支出を削減するように説得されていたことにも注意してもらいたい−−そのために1938年が景気後退年となったのだ。そして、ウォールストリート・ジャーナルの連中はそれをニューディールだと定義している。
オバマへの忠告はこうなる:FDRの例に倣え、しかし何もかもを真似はするな、と。とくに経済政策は大胆であるべきだ、慎重であってはならないのだ。

*1:クルーグマン自身も[http://d.hatena.ne.jp/okemos/20081102/1225634012:title=語ってます]。

*2:第32代アメリカ大統領でニューディール政策を行ったフランクリン・ディラノ・ルーズベルトのこと

*3:アメリカの右派は社会保険制度を導入したニューディールを憎んでます。

*4:厳密にいえばちょっと違う気はしますが、日本だと[http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/3292efd60673d3c6e5f127f5e3648efe:title=ここ]になりますかね。