P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

アメリカはどれくらいの景気刺激が必要か?

クルーグマン11月10日のコラム(翻訳)のフォローアップのブログエントリーです。必要な財政政策の規模について計算されてます。

財政刺激の算数(ちょい学者向け) ポール・クルーグマン2008年11月10日
私がこの今朝のコラム(翻訳)を書いたのはオバマのところの人達が財政刺激について慎重にすぎるのではないかとすこしばかり不安だったからだ。今はもう、すこし不安どころではない--信頼できない噂によると、ほんとにそうらしいのだ!なので、私の考える、財政刺激の算数についてちょっと語っておこう。
ただ、算数の前に少しばかりコンセプトについて。現時点でほとんど全ての景気予測は、力強い政策がとられないなら実質GDPはもうすぐその潜在レベルを下回る事になると見ている。通常ならば、それに対応する為に利子率が切り下げられることになる。しかし利子率はもうすでに意味ある切り下げを行う事が出来ないところまで下がっているのだ。財政政策しかもう残っていないわけである。
さらに、次の事もある。ベン・バーナンキ*1は紐を押す事はできないのだ−−必要なら引く事は出来るのだが。財政政策が行き過ぎて、実質GDPがその潜在レベルの2%上へ「行こうとする」ようになったとしよう。そんな場合には連銀は景気の引き締めにかかり、世は事もなしとなる。しかしもし財政政策が余りに引き締めすぎで実質GDPが潜在レベルを割り込むこととなったならば、それを補う金融政策は事実上存在しない。これはつまり、財政政策は過大な方向に間違えた方がいいということだ。
では必要な数字はどれくらいだろうか?翌年のGDPは15兆ドルくらいになるだろう。つまりGDPの1%は1500億ドルとなる。自然失業率は5%だ、多分。もっと低いかもしれない。するとオークンの法則から、5%を超える失業率各1%ポイントは2%の産出ギャップとなる。
今のところ失業率は6.5%で、産出ギャップは3%だ−−しかしこれらの数字達は急上昇中だ。ゴールドマン・サックスは8.5%の失業率を予測している。つまり7%の産出ギャップだ。これはありそうに思える。
よって、我々は産出ギャップ7%を埋めるのに十分な財政刺激が必要なわけだ。もし刺激が強すぎても、弱すぎる場合より害は少ない事をわすれないように。乗数はどれくらいだろうか?2008年始めのよりは良い、と願う*2。しかし乗数効果が2もあると主張するのは難しいだろう。
これら全てをまとめると、財政刺激策は少なくともGDPの4%、つまり6000億ドルが必要だろう。
さて、それは信頼できない噂が伝えるものの2倍になる。もしその噂に少しでも真実があるなら、政策担当者へ(というか2ヶ月後の彼らへ)私はこう言いたい。よく考えてみてくれ−−低めに投げるのは、本当に、本当に、危ないんだよ。

*1:アメリカの中央銀行(連銀と略称される)の総裁で利子率に影響力を持つ。

*2:2008年初めに連邦政府は減税を行った。