P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

オバマ経済政策に対する批判...左から

オバマ次期政権の発足はまだ2ヶ月以上も先の話ですが、もうすでにオバマ政権の経済政策に対する批判が色々と出てきてます。右からは当然として、左からも。クルーグマンこれなんかもその一つではありますが、左からの批判のメインはオバマがクリントン政権の経済政策を踏襲するのではないかという事、具体的には財政赤字削減・ドル高を経済政策の中心におくのではないかというもの。あとクリントン政権の時に規制緩和を推進した連中がオバマ政権にも経済担当としてまた入ってくるのではないかという懸念です。特に槍玉にあがってるのが、クリントン政権時代の財務長官であったルービンとサマーズです。彼らはクリントン政権後半にドル高と金融自由化(いわるゆるワシントン・コンセンサスってやつですね)を進めたということで、アメリカの左の一部からは猛烈に受けが悪いです。サマーズはオバマ政権の財務長官候補として名前が挙がっているのですが、その事についてリベラルのディーン・ベーカーがTPMにて猛烈にほえてまして、これからの内輪もめが予感できてわくわくするので訳しておきます(俺は政治傾向はリベラルですが、ちゃんと文章を書ける人達同士の批判の応酬を見るのは大好きなので)。彼はルービン・サマーズに留まらず、彼らを政権に迎えるならオバマも同罪だ!という感じで批判してますし、クリントンなどその経済政策が2000年代の住宅バブルにつながったとか批判してます。同様の批判を右の人らがブッシュを庇護するためにやってたのを読んだ事が以前ありますが、あらあら、リベラルの人までそんな事いってちゃまずいでしょうに。でも、そこら辺の政治的計算がなかなか出来ないから、リベラルなんですよね。

バブル経済の神官達  ディーン・ベーカー 2008年11月11日バラク・オバマの経済顧問の会議について注目していた者は皆、楽観的な気分にはなれなかっただろう。クリントン政権の二人の財務長官、ロバート・ルービンとラリー・サマーズが出席していたのだ。元連銀総裁であるアラン・グリーンスパンと共に、ルービンとサマーズはバブル経済の神官団をなしていた。彼らの一方通行の金融規制緩和が現在の経済危機の原因であるのだ。
クリントン時代の神話と実際の経済の記録を別けておくことは重要だ。神話では、クリントンの増税と歳出削減が投資ブームにつながったことになっている。このブームが生産性の急上昇につながった。生産性向上が1990年代後半の低失業率につながり、賃金分布全域での労働者の賃金上昇へとつながった。
政権の終わりには、財政は大きな黒字で、国家債務がゼロになる時期まで考察されていた。神話の主張するところは、全ての良き事は財政赤字削減から起こるというものだ。
真実はかなり違う。90年代の後半に莫大な資本が馬鹿げたインターネット投資につぎ込まれたドットコムバブルまで、投資ブームのようなものは起こらなかった。1995年から生産性の急速な向上が起こったが、しかしこれは投資のどんな重要な増加にも先立っている。クリントンは、情報技術革命からの長らく予測されていた配当をようやく経済が受け取った時にたまたまホワイトハウスにいたという幸運に恵まれたのだ。
クリントンブームの時に投資が成長を主導したのではなく、需要増加の主因は消費であった。証券市場が生み出した10兆ドルの富によりクリントン時代に消費が急増した。株主がそのバブルの富に基づいて消費し、貯蓄率を記録的な低さへと押し下げ、GDPでの消費シェアを記録的な高さへと押し上げた。
この物語の後一つ重要な点は、ルービンが財務長長官であった時のドル高政策である。クリントン政権初期では、他の通貨に対してドルは実のところその価値を下げていた。これは財政赤字削減の予測される効果である。低い財政赤字は金利を下げるし、低金利はドルの価値を下げる。
ドルの減価は、アメリカの外国人に対して輸出品を安くし、アメリカに住む人に対して輸入品を高くするので貿易赤字を減らす。ドルの減価と貿易赤字の低下は財政赤字減少の主な成果の一つとされるものだ。実際、ドルと貿易赤字の低下は経済学者から財政赤字削減の主な効用であると経済学者から称えられていた。彼らが話をクリントン神話に合うように帰るまでは。
1990年代後半のドル高はこのロジックを反転させた。財務省の後押し、東アジアの金融危機から始まった金融不安定化、そして外国人も感染した証券バブルの非合理的熱狂のコンビネーションによってドルは押し上げられた。
短期的には、その力以上に高くなったドルは輸入品を安くしインフレーションを引き下げた。そのついでに、それは数百万の製造業の雇用損失を招き、非大卒労働者の賃金に下方圧力をかけた。
証券バブル同様、ドル高政策は長期的には維持できるものではない。それは膨れ上がっていく貿易赤字につながってしまう。この貿易赤字がいつかはドルの価値の減少につながってしまう。まあ、これは現在の金融危機により一時的に反転しているが。
ジョージ・ブッシュクリントンは、繁栄する経済ではなく、維持できない証券バブルと余りにも高すぎるドルによって下駄を履かされた経済を引き渡したのだ。
2001年の不況は比較的短かったのだが、その不況が終わってからも2年半の間、経済は雇用を減らしつづけた。ブッシュ大統領がドル高政策の放棄に反対したので、景気を盛り上げる為の手段は住宅バブルしかなかった。住宅分野からの直接の成長に加えて、このバブルからの生み出された富が証券バブルの時よりもさらに貯蓄率を押し下げた。
勿論、住宅バブルは今、縮小過程に入っている。その結果である不良債権の大波が第二次世界大戦以来、最大規模の金融危機を引き起こしたのだ。住宅の富の8兆ドルの損失は、消費は干上がらせ、経済を深刻な不況の中に叩き込んだ。
ブッシュ政権がこの現在の危機の責を負うべきなのだが(彼らは過去8年に渡り権力を握っていたのだから)、その舞台はクリントン時代に整えられたのだ。クリントンチームは経済を一方通行の金融規制緩和とバブル主導成長へと向かわせ、我々を今のこの状態へと導いた(規制緩和は一方通行だった。というのはウォール街の連中の「潰すには大きすぎる」という魔法の呪文を彼らは取り上げようとはしなかったからだ。)
この理由から、オバマの経済会議の中心にクリントン政権の閣僚がいるのは非常に失望させられるものである。これは変化ではないし、我々が信じることの出来る政策では全く無い。