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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

第2次世界大戦は大恐慌を終わらせたのか?

Marginal Revolution 大恐慌 第2次世界大戦

大恐慌を終わらせるのにニューディール政策が大した効果を発揮しなかったというのは、左右双方の共通見解です。右はこれを政府介入や財政政策の無力を言い立てるために利用しようとしますが、その場合、左は実はニューディールにおいては景気回復のための財政政策が実行されなかったというだけです。そしてその上で左側の物語は、巨大公共事業としての第2次世界大戦が経済を回復させたのだ、となるわけです。しかし財政支出の効果を否定したい人達は、それも否定にかかるわけですね。Marginal Revolutionのタイラー・コーエンがクルーグマンによる財政支出待望論に影響された人達に水を差すために、そういうエントリーを書いてました。正直、俺自身第2次世界大戦がアメリカを大恐慌から助け出したと思ってましたから、このエントリーには驚きました(でもほんとかよ?とちょっと眉唾なんですが)。
何が大恐慌を終わらせたのか? タイラー・コーエン 2008年11月11日

大恐慌を終わらせたのは巨大公共事業としての第2次世界大戦だという昔ながらの見解がまた新たに出回っているようだ。この主張は対象についての我々の現代の知識とは整合的でない。最新の文献を手短にサーベイしてみると、
クリスティン・ローマ−は次のように述べている

この論文は大恐慌の終了における総需要刺激策の役割について考察する。簡単な計算から、1942年以前でのアメリカ経済の観察された回復はそのほとんど全てを通貨供給の増加によるものであることを明らかにする。1930年代中期および後期の莫大な金の流入がアメリカの通貨保有量を膨張させて実質金利を引き下げ、投資支出と耐久財の購入が増加することにより景気を活性化させたのは明らかだ。通貨面での展開が景気回復にとって非常に重要であった事は、1933年から1942年までの間の実質産出増加において自律的調整はほとんどその役を果たさなかったことを意味する。

このトピックについての他の興味深い論文としてこれをあげておく;この論文は生産性と平均回帰性に着目している。CullenとFishbackのこの論文からも引用しておく:

我々は軍の動員関連での連邦政府の大規模な支出があった地域(the centers of federal spending on military mobilization)の地元経済が、他の地域と比べてより高い消費の増加をみたかどうかを調査した。我々は様々な情報源からの広範囲の情報を一つのデータセットにまとめて、一人当たりの小売売上の成長率(1939−1948、1939−1954、1939−1958)と1940年から1945年までの連邦政府の一人当たり軍支出との誘導型の関係を推計した。その結果は、第2次世界大戦の支出は我々が調査した消費の成長率において実質的に何の影響もないというものだった。

第2次世界大戦説の更なる論破はロバート・ヒッグスによるこの論文に見つかる。彼は通常のGDP値と実際の経済厚生との違いを強調している。
また、南米諸国の経済の経験もこのことを理解させてくれるだろう。アルゼンチンの景気回復は、明らかに財政政策ではなく金融政策に負っている。回復の期間中、財政政策は緊縮財政を続けていたのだ。メキシコは大恐慌からの回復を比較的急速に成し遂げたが、この歴史もまた財政政策説にそぐわない。後に、ほとんどの南米諸国は戦時需要により一次産品のブームを経験したが(commodity booms)、しかしこれもまた財政政策ではないし、かれらが戦争を戦っていたわけでもない。景気回復に財政政策が大きな役割を果たした2ヶ国は、驚く話ではないが、ドイツと日本である。しかし、それはかれらの戦前の支出の事なのだ。