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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

共和党の死角

下のエントリーでP.E.S.のSはSFのSだと書きましたが、P.E.S.のPは政治PoliticsのPです。さてその政治、というかアメリカ政治での大統領選終了後の面白そうなところは、果たしてこれから共和党・保守派はどうしていくのかという点です。いや勿論、オバマの経済政策や外交政策などが人事も含めてどうなるか等も面白そうなところですが、共和党の敗北を受けて党や保守派の再生が色々なところも言われてまして(ここここなど)なんか面白いことがあるかもと期待させてくれます。現在の、キリスト教原理主義反知性主義、そして南部白人層と結びついた共和党の支持基盤は、60年代、市民権運動に対する民主党ジョンソン政権の支持に反感を持った南部白人層を取り込んでいこうとするニクソンの南部政策からと言われています(この事の簡単な説明としてはクルーグマン「格差はつくられた」をどうぞ。もっとも邦訳の方は抄訳だそうで、はたしてどの程度説明が残ってるのかしらないのですが)。伝統的に民主党支持だった南部の白人層(なんつっても南北戦争で南軍を破ったのはリンカーンの共和党ですから)を共和党支持に変える事に成功したこの南部政策により共和党はアメリカの政治地図を書き換え、選挙での勝利と「アメリカは保守の国だ!」という雄叫びを手に入れました。東海岸と西海岸、あと五大湖周辺以外は共和党の赤にそまったこの地図(追記:これは2004年のもの)を見れば、たしかにそんな事を言いたくもなります。しかしそのような南部白人層の人種差別意識に頼った戦略は、保守保守と言い立てつつもどんどん進んでいっていたリベラル化、つまりアメリカの非白人化(アメリカの国勢調査局は2042年には非ヒスパニックの白人人口比率が50%を割るとしています)および人種差別意識の希薄化(黒人・白人間での結婚を認めるかどうかのこの調査では80年代中に認める人の比率が認めない人の比率を上回るようになり、その後も差は開きつづけています)によって、いつの間にやら一部高齢者の集団にしがみつく戦略となってしまっていました。ついには共和党は南部白人対象の地域政党になってしまったと共和党の政治家からも言われる始末です。この状況を何とか変えることができるのかどうか見ものなわけなので、今後政治系では共和党と保守がどうなっていくかについてのブログエントリーで面白そうなのを訳していくつもりです(まあ、そんな事に興味を持っている日本人がこの世に何人いるのか俺は知りませんが、俺は興味を持っているのでやります)。
共和党の死角 ヘンリー・ファーレル 2008年11月13日

キャスリーン・バウム(Kathleen Bawn)、マーティー・コーヘン(Marty Cohen)、デビッド・カロル(David Karol)、セス・マスケット(Seth Masket)、ハンス・ノエル(Hans Noel)そしてジョン・ゼラー(John Zaller)の論文(PDF)、A Theory of Political Party (政党の理論)、は大いに注目(PDF)を集めているようだ。正当なる注目を。その論文は利益集団を前面に置いた政党の新しい理論を提唱している。単純化していってしまうと、バウムその他の理論は、政党とは利益団体(大衆一般のものとは異なる一連の目的に強い執着を持った全ての集団の事とされる)が彼らの間での提携を通して、その集団の政治的目的を実現してくれる政治家を選挙に勝たせるための手段として理解されるべきだというものだ。政党は、有権者の選好に反するような利益団体からの要請にすら答える事が出来る。というのは、有権者は「死角」を持っているからだ--政党が余りにも過激な方に行っていないように見える限り、有権者は政党に十分な注意を払わないし、政党を罰する事もない。だから政党はその死角の内側、境界ぎりぎりと思えるところまで、彼らは利益団体の為に進もうとする。そうする事で、有権者から罰されずに彼らは利益団体を喜ばせる事ができる。
たとえ政党の政治家達が(バウムその他がそう主張するように)その境界の正確な位置を知らなくても、彼らの行動に関してある程度の予測をすることができる。第一に、「政治家達は過激な[政治的位置]の危うさに系統的に大きなウェイトを置くだろう。それはその死角の外に出てしまう危険性のことで、そうなれば選挙で確実に負けてしまう」。第二に、政党政治家は選挙民の死角を少しでも大きくする為に、(政策決定の詳細を隠す事で)「物事をあいまいにし」、(票決の順番を操作して、政治家達が反対している政策にまるで賛成しているように見せかけ、またその逆を行う事で)「選挙民を惑わせる」だろう。第三に、政党は有権者の許容範囲を調べるために、時折「過激な」候補を立て、政党自身の予測に反して彼らが勝てるかどうか確認するだろう(もし彼らが勝てば、死角はそれまで思われていたよりも大きかったという事だ)。第四に、もしこれが上手くいかなかった時は、選挙に勝つ可能性を高めるため、次回にはより穏健な候補を立てだろう。
これは恐らく、共和党がなぜジョン・マケインをその大統領選候補として選んだのかの理由を教えてくれる—彼は「穏健」だと最も思ってもらえそうな候補だったのだ。マケインは勿論、予備選や大統領選本選においてはその穏健さを抑えておかなければならなかった。さもなければ、保守派支持層の反感を買ったかもしれないからだ。興味ある疑問は、バウムその他[の論文]が2012年に共和党が誰を選び、その人物がいかに自身を売り込むかに関して予測する力があるかどうかだ。
もし彼らの主張がこの点について正しいなら、共和党は、自分は穏健だと売り込んで上手く死角の中に入り込む事のできる人物を少なくとも選ぶだろう。もし正しくないなら、今回の共和党の問題は党の信条や保守主義の原則を語らずに、よりあいまいなメッセージを送ってしまった事だとみなして、共和党はより明確に「過激」な誰かを選ぶだろう。この時点ではどうなるかまだ全くわからないが、しかし今のところの多くの兆候は前者ではなく後者の方を示している;共和党内派閥の何人かの有力なリーダー達が、マケインは十分に共和党員ではなかったから負けたのだと主張している。もし彼らがその方向に進んでいっても、それはバウムその他の主張を覆す事にはならないが(結局それは避け得ない法則ではなく、大まかな傾向に過ぎないのだから)、しかし共和党が「理性的」でないという事を示唆することになるだろう(「理性的」でないとは、共和党内の提携が上のリンク先で描写されたような環境下で勝つ可能性を最大化しようとしていないという意味でだ)。