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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

臓器提供と健康保険

経済学 健康保険

(追記あり)
Freakonomicsのスティーブン・ダブナーがアメリカの臓器移植について触れています。、アメリカの臓器移植について、保険を持っていない人達が臓器を提供し、保険を持っている人達が移植を受けている現状が新たな研究からはっきりしたというものです。アメリカの国民皆保険を求めるアメリカの医師団体の声明からの引用らしいのですが、その声明自体へのリンクがありません。ただ、その団体のHPはこれで、研究についての元々の論文はこれ(PDF)ですね。訳はその引用の一部だけです。
移植医療に金がかかり、また提供される臓器が足りないという現状では、そりゃそうなるよなぁという話です。でもそれって、引用中でも示唆されてますが、国民皆保険制度のないアメリカの現状を考えると、保険を持てる中産階級以上が移植を受けて生き続けられるように、保険を持てない貧困層は保険のないが故に若死するようにさせられていると見えるわけです(高齢者の臓器は移植にはあまり使われないそうです)。
[追記:これは軍隊もそうですね。別に誰かが臓器を取り出される為に殺されてるわけではないし、頭に銃を突きつけられて戦場に送られるわけでもない。臓器移植も軍への入隊も誰かの強制の結果ではなく、自主的に行われている(臓器の提供にも一応、生前の承諾や家族の同意が必要ですから)。個々の選択は、とくに入隊は、決定する個人が自身の利益のために行っているのに、結果としては貧困層が中産階級以上の為に死ぬという事になるような社会構造になっている。]
その手の話はSF、ホラーでありがちなアイデアですし、あと現実にも先進国から発展途上国へ移植を受けに行く人達もいるわけですが、アメリカ国内でもより目に付きにくい形態で同様なことが起こっていると。金がなければは早く死に、金があれば命を永らえることができる。で、この医師団体は国民皆保険制度のアメリカでの実施を求めているのですが、実はダブナーの方は臓器移植市場推進の立場からこれを引用しています。市場のない現状よりも臓器市場があった方が、貧困層はより多くの臓器移植を受けられるだろうと。シンプルなミクロのモデルなら確かにそうなりますが、ねぇ...
Frekonomics 2008年11月18日

健康保険を持っていない人は持っている人と比べて、肝臓、腎臓を移植のために提供する事が20倍も多いことが新しい調査でわかった。
International Journal of Health Servicsに掲載されたハーヴァード大学研究者チームの報告によると、2003年、アメリカの典型的患者の調査では、臓器提供者の少なくとも16.9%%が入院の時点で健康保険を持っていなかった。これに対して、移植された患者で同様に健康保険を持っていなかったのはたった0.8%だった。つまり、移植を受けた人のほとんど全ては手術の時点でなんらかの健康保険を持っていたわけである。
・・・
しかし臓器提供者のなかで保険はそれほど一般的ではない。医療支出の支払いの源泉で、民間の保険の比率はもっとも高く(44.8%)、その後にメディケア(14.6%)、そしてメディケイド(2.6%)が続く。臓器提供者の保険の状況について「その他」とされるものが五分の一を占めるが、これは臓器提供を助ける機関によって支払われたものである事を示唆している。しかし、たとえそれらの全てが何らかの保険であったとしても、著者達は16.9%の臓器提供者が保険を持っていなかったことを発見した。これに対して、他の入院患者で保険を持っていないのは4.6%であった。

移植を受けた人のほとんどは、移植を受けた時点で保険を持っている事はこれまでも良く知られていた。しかし、「保険を持っていない患者が臓器提供者になる事が多いという私達の発見は新しく、そしておぞましいものです」、と著者達は述べている。「アメリカの健康医療システムは保険を持っていない人達にその存命中、ちゃんとした医療を提供しません。にもかかわらず死後には、保険を持っていない人達が究極の贈り物をすることになるわけです。」
驚いた事に、患者が臓器提供を行うかどうかについて、病院側の体制や年齢以外の患者の各種条件をよりも、保険のあるなしが遥かによく予測できるのだ(高齢者の臓器は病気のために移植に適さないことが多い)。

研究の中心執筆者であるAndrew Herring博士はこうコメントしている:「もしあなたが保険か何かで移植を賄うことができないなら、あなたを移植対象者としてくれる医療機関はほとんどありません。1984年のNational Organ Transplant Act(臓器移植法)は、支払能力に関わらず全てのアメリカ人が臓器移植を受ける事ができることを求めています。残念ですが、現行の健康医療システムにはこれを実現するための資金がないのです。」

Institute of Medicineによると、毎年、1万8千人の人が健康保険がないために死んでいる。国税調査局の8月の報告によると、2007年には4560万人のアメリカ人が健康保険を持っていなかった。