読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

サミュエルソン:中道主義

シュピーゲルオンラインのノーベル賞受賞経済学者による金融危機コメント集第3弾、ポール・サミュエルソンです。サミュエルソンって、既にもう93なのだそうですね。まあ第2次世界大戦前から活躍しておられますから、それぐらいになるか。さらなるご長寿をお祈り申し上げます。
(コメントのタイトルは"The Dynamic Moving Center"というのですが、これをどう訳したらいいのかよく分かりませんでした。意味としては恐らく、常に変わる状況に対応できる柔軟な中道(主義)の事かと思いましたのでそういう訳をしましたが、間違っているかもしれません。)
追記:このエントリーのため、一部翻訳を変更しました。
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,590034,00.html:titile=つねに変わりゆく中道(The Dynamic Moving Center) ポール・A・サミュエルソン 2008年11月12日

経済の短期・長期における歴史の知識から、私は経済的な貧者と経済的な富者、双方を十分にまとめることのできるシステムは市場システム以外には存在しないと考えている。
しかし、市場を使うという事と、リバタリアンが愛して止まない規制なしの資本主義とは全くの別ものだ。ミクロ経済的にもマクロ経済的にも、そんなものが自らを規制するなど無理な話だ。実施されたところではどこも、許容しがたい不平等が必ず発生する。そしてそんな不平等は、技術的・経営的なイノベーションによって力強い進歩を実現するための仕方のない代償、などではない。それは経済学者が「全要素生産性」と呼ぶものを、機能不全に陥らせる欠陥を生み出す代物なのだ。
2001年から2008年までのアメリカの低下は、この事の認めざるを得ない証拠だろう。中位の労働者の給与に対するCEOの報酬が、よりまともな40対1から400対1やそれ以上になる中で*1、工業生産の向上は加速するのではなく、低下していった。
それ故、私の思想は中道派のもので、変わることはない。そしてそれが2009年、そしてそれ以降のアメリカの目指すべきものとなるべきなのだ。そして、それを大小に関わらず全ての国の目標とする事を薦めたい。リバタリアン達はただ情緒面で問題がある悪しき情緒障害者であるというだけではない。彼らは無能なアドバイザーでもあるのだ。勿論私は、ミルトン・フリードマンとフリードリッヒ・ハイエクの思想の事を言っている。彼らが警告した「隷属」とやらは、ジンギス・カンや、レーニン−スターリン−毛、そしてヒットラームッソリーニ達のものではない。そうではなくて、彼らは現代社会の中道主義の国家について警告をするのだ。スイス、イギリス、アメリカ、スカンジナヴィアン諸国、そして環太平洋諸国の事だけを考えて見てほしい。なぜその地域の市民達は「幸福」についての指標で高い値を記録し、言論や信仰の広範囲の自由を享受しているのだろうか?
ジョージ・W・ブッシュ大統領は234年のアメリカ史の中で最悪の大統領として歴史書に記録されるだろう。彼の残した(悲しいかな)受け取り拒否出来ない幾多の遺産の一つが、2009年から2014年においてアメリカの大衆の中で中道を越えた左への大幅な反動かあるかもしれないことである。もしアメリカが保護主義者となるならは、過去の共和党の規制緩和が責められるべきだ――意図せざる結果の法則の見事な例といえる。
勿論、公共政策は企業を(合理的に)規制するべきだし、マクロ経済を安定化させる事に務めるべきだ。勿論、将来の財政システムは不平等の悪徳の栄えをある程度は翳らせる事も出来よう。しかし、不平等を減らそうとしすぎれば中道のシステムも手酷い害を及ぼしかねない。私の望むのは、それほど積極的ではない中道国家である。
左や右について心を決めかねているから、私は中道なのではない。その双方が余りにも最適とはかけ離れていることを証明してきたからなのだ。理性と経験ゆえに私は追い求めるのだ、常に変わり続ける中道の道を。

*1:正確な数値は思い出せないですが、CEO報酬対労働者給与の比率は2001年の段階でも40対1よりもずっと高かったと思います。