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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

ロデリック:保護貿易と成長

ハーヴァードの国際貿易と開発経済学のダニー・ロデリックです。経済学の決まり文句を繰り返さない(自由貿易!政府の仕事は、所有権の維持とマクロ経済の安定!)が、といってつまらない資本主義・主流派経済学批判に堕さないダニー・ロデリックは面白いと思います。ただ、サミュエルソンと比べて、ブッシュ反動の保護主義者の一人に見られたりしたらイヤなので書いときますが、ロデリックは世界的不況下で先進国が保護貿易に走ったりする事は反対してますよ。お間違いなく。
保護貿易と成長   ダニー・ロデリック 2008年11月17日

あーもう、またか!貿易の自由化/保護主義が経済成長を促進するか妨げるかという疑問は、経済学が敬うべき疑問の一つということになっているので、とにかく簡単には消えてくれやしない。ファイナンシャルタイムズに載ったHa-Joon Chan’sの最近の論説をその一例として読んでみてくれ。こういう事になる理由の一つは、議論の大半が実際の証拠ではなく机上の理論についての(たとえば市場と政府の効率性の比較だとか)に費やされるからだ。
最近、二つの論文が大きな前進をなしてくれた。一つは、LehmannとO’Rourkeによる19世紀後半末についてのもので、もう一つはEstevadeordalとTaylorによる、過去30年についてのものだ。この二つの論文の主要な貢献は、異なるタイプの関税についての区別を行ったという事だ。LehmannとO’Rourkeは工業を保護した関税、農業を保護した関税、そして関税収入を上げる事だけを目的とした関税をそれぞれ区別した。彼らの結論は:

工業関税は成長と正の相関を持っていた。農業関税は成長と負の相関をもっていた。ただしばしばその関係は通常のレベルで統計的に有意ではなかったが。収入関税と成長の間には関係はなかった。

対象となった国は、主に1875年から1913年の期間中の先進国だ。
一方、EstevadeordalとTaylorは資本財、中間財、そして消費財、それぞれについての関税についての区別を行った(後それと、reverse-causation(?)の問題を緩和するために、imaginative identification strategy(訳注:うーん、計量経済学は苦手です)を利用した)。彼らの発見は、成長を阻害するのは主に資本財と中間財についての関税であって、消費財への関税はずっと弱い効果しか持たないというものだ。
さて、これら二つの結果はある程度お互いにとって問題がある。そしてまた両者の相違は統計手法の違いから来ているのか、19世紀末と20世紀末は本質的に別ものだったのか(19世紀末は工業製品の保護が成長にとって有益な時期だったが、20世紀末には保護はひどすぎる被害を与えないというのがせいぜいな時期だったとか)、明らかではない。
両論文の調和をどう取るかはともかくとして、とにかく結論はこうだ:重要な事は保護の構造(なにが保護されているのか)なのだ。古くからの疑問への答えは、経済学者がそれを答える事に新しく慣れなければならないものだ。つまり、条件による、だ。
そして勿論、条件の一つは世界のマクロ経済の状況ということになる。世界が不況に突っ込んでしまっている時には、貿易保護によって自国の問題を他国に輸出する事は、責任のあるいかなる国もやってはならない事だ。