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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

ケインズ:1938年の現状、そしてアニマルスピリッツって...

ケインズ 大恐慌 ニューディール

俺も少しはやる事があるんですが、最近訳している大恐慌とニューディールがらみ、そしてなによりケインズ!の文章という事なので、これを訳してみる事にしたのですが...実はケインズの文章って読んだ事は、ほとんどありません。当然ながら「一般理論」も読んでません。読んだ事もないまま彼の「アニマルスピリッツ」という言葉だけは知ってましたから、これを訳して少々驚きました。別に「市場原理主義」なつもりはないですが、それでもあまりに露骨な表現で。有名な比較なんでしょうか?全然知らなかったけど、「アニマルスピリッツ」という言葉の絡みでなんだか嫌な妄想が...
原文はアメリカ西部の公立大学で歴史を教えているというエリック・ローチウェイ(Eric Rauchway)による、ケインズからルーズベルトへの有名な手紙の始まり部分の解説です。
ケインズからFDRへ 1938年2月1日  エリック・ローチウェイ(Eric Rauchway)

多くの人から質問を受けたが、重要な部分−−手紙の書き出し部分−−がインターネット上ではどこにも見つからないようなので、ここにルーズベルトへのケインズの手紙の書き出し部分を載せておこう。いくつかの原文改変/解説と歴史的事実もつけて。

... 現在の不況

−− 彼はここで、1937後半から1938年の景気後退の事にふれている。大恐慌の事ではない −−

の責任の一部は「楽観主義の誤り」にあります。これの為に、今年の前半、(まだ)財への発注があった時に(?"when orders were being placed in the first half of this year")、将来需要を過大評価してしまいました。もしそれだけなら、それほど心配する事もなかったでしょう。再調整の為の時間が必要なだけだったでしょう...
しかし、それだけではなかったと私は確信しています。よりはるかに厄介な問題が頭をもたげつつあるのです。回復は主に以下の要因によるものでした:−−
(i) 融資と債務超過の問題の解決、そして借り易い短期融資資金の設立;
(ii) 失業者への適切な救済システムの設立;
(iii) 政府資金や保証による公共事業およびその他の投資;
(iv) 増加する消費財への需要を満たす為に必要な生産財(the instrumental goods)への投資
(v) 始まった景気回復の勢い(the momentum of the recovery thus initiated)
まず、これらのうちの(i)は回復の為の前提条件でした。融資への需要を高めても、もし供給がなければ仕方がありませんから。

この部分は私達教師が「よくできましたサンドイッチ」と呼ぶものの始まりの部分だ−−まず何かいい事を言っておいてから、なぜ成績がD(訳注:不合格ぎりぎり)なのかを説明する。というわけで、では始めましょうか、大統領閣下:全国銀行休日(the bank holiday)、通貨の平価変更と安定化、預金保障、復興金融金庫による銀行の資本注入−−大変よくできました!

しかしながら、供給の増加それ自体は、十分な需要を作り出しません。

たとえば、まだみんな銀行からお金を借りていない事をご存知ですか?銀行がまだお金を貸していないからです。では、どんな対策をしなければならないでしょうか?

失業が改善していくにつれ、(ii)の影響は薄れていきます。ですからそれがもう経済に影響を与えなくなる時点があるわけです。

あなたにとってもいいことですね。もうみんな飢えてないわけですから。しかし救済は回復ではありません。

(iii)への依存は昨年、大幅に削減されてしまいました。

傷つかないように優しく言いましたが、ああ、まったく、なんで公共事業促進局(WPA)や公共事業局(PWA)(の予算)を削減したんですか?景気回復がようやく始まった時に、財政回復とは?!

(iv)と(v)は将来の景気の関数で((iv) and (v) are functions of the forward movement)、現状の回復が止まると共に止まってしまいました。いや、(v)は反転すらしています。

わかりますか?ようやく政府支出の歯車が経済のギアを動かし始めた時に、弱気になったあなたがクラッチを後ろに引いたんですよ。そして勿論、(景気は)停滞してしまいました。

回復の勢いからの利益とは、上昇の動きのなかで最も重要で、もっとも危ういものです。その継続の為には、ただ回復が維持されるだけではなくて、さらなる回復が必要なのです。ですから、回復初期にはおだて上げるくせに、その助けが一番必要な時にはすぐに逃げてしまうのです(? "it always flatters the early stages and steps from under just when support is most needed.")

初期の停滞を脱する為、そして経済を順調な軌道に乗せるために、政府のさらなる支出が必要なんです。

私は、昨年の「楽観主義の誤り」を引き起こした主因はこれだっただろうと考えています。
それゆえ、上に挙げた要因が他の何かによって上手く補われるのでなければ、現在の停滞は当然予期できるものでした。

わたしは、あの時、支出を減らすべきじゃなかったなんて猿でもわかった事でしたと言わないように、非常に気をつけてますよ。「猿でもお前よりましだぞ」というのは、(教師として)言うのは避けたい言葉です。

現在の政策がこの停滞をかつてのような惨状にまで落込むのを防いでくれるだろうというのは正しいでしょう。

おめでとう。ハーバート・「失業率ほぼ25%!」・フーバー並のところまでひどい事はしませんでした。しかし。

しかし、このままでは−−どのようにしても、(iii)への大幅な復帰がなければ−−

(iii)の事を覚えてますか?(iii)は「政府資金や保証による公共事業およびその他の投資」でした。あなたはそれがさらに必要です。非常に大規模な。さもないと、「楽観主義の誤り」から、->大惨事です。

−−適切なレベルで繁栄を維持する事はできないでしょう。

手紙にはまだ更にアドバイスが続く。そしてもう一度FDRに大変良く出来ましたと述べる最後の部分へ向かいながら、良く引用されるビジネスマンと「ひどい育てられ方をして望むような躾けは受けていないが、それでもその本質からの家畜」との比較と共に、FDRに市場はリードできると伝えるのだ。

ジョン・メイナード・ケインズからフランクリン・ディラノ・ルーズベルトへ 1938年2月1日 「1931年から1939年の経済活動」、ジョン・メイナード・ケインズ全集第21巻(ケンブリッジ、英国:マクミラン、1982年)、pp.434−439。