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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

サマーズの失業に関してのエッセイで書かれていたこと

ローレンス・サマーズ 失業

池田先生がこの「失業の最大の原因」というエントリーにて、オバマの経済アドバイザーとなったローレンス・サマーズの失業に関するエッセイに触れられてまして、俺はそのエントリーへのブクマで先生はほんとにこのエントリーを読んだのかな?という疑問を書きました。池田先生はその次のエントリーにて、あのサマーズの話は自然失業率に関するもので*1、そんな事も分からん奴らには困ったもんだとおっしゃっておられます。自然失業率は需要側の要因ではなく供給によって決まり、政府介入や労働組合はその供給要因に作用して自然失業率を高めるものだと。で、俺は労働もマクロも専門ではないので、この事自体についてどうこう言うつもりはありません。そして、池田先生がおっしゃられるような事はマクロの教科書に確かに載っていることだという事についても完全に同意します。ただ俺の疑問は、池田先生がなぜ「失業の最大の原因」のエントリーで、失業の問題に関心がある人はサマーズのエッセイを読めと書かれたのか、です。だって、これを読むとたしかに政府介入や労働組合は失業率を高める要因となるとは書かれているんですが、その後、
"It is, however, a great mistake (made by some conservative economists) to attribute most unemployment to government interventions in the economy or to any lack of desire to work on the part of the unemployed.
「しかし、(保守派経済学者の一部がするように)失業の大部分は、経済への政府介入や失業者の側の労働意欲の欠落に責任があるとするのは大きな間違いである。」
"Even leaving aside cyclical fluctuations, a large part of unemployment is due to demand factors rather than supply. "
「周期的な変動のことは置いておいても、失業の大きな部分は供給ではなく、需要の要因に関わっている。」
となっていくんですよ?福祉国家労働組合が強力になる前から、失業は深刻な問題だったとも書かれています。エッセイの終わりの部分は自然失業率の話になるんですが、ここでも労働組合の話、国際競争の話と共に、摩擦的失業の低下の話をしていますが、この部分は政府介入や組合とどれくらい関わりがあるんでしょうか?実は俺自身、このエッセイを読んで、短期の雇用の変動は需要の変動によるが長期的な雇用水準は供給要因によるとするマクロ経済学の教科書レベルの理解とは、ちょっとずれているような気がして気になったんですが。とにかくこれを読む限りでは、池田先生のエッセイにあったように政府規制や労働組合はいけない!、という印象は持たない、とは言いませんが、持ちにくいのではないかと思います。にもかかわらず池田先生が反政府介入・反労働組合の文章としてお勧めになられていたので、ブクマに「池田先生はこのエッセイをほんとに読んだのかな?」と書いたわけです。まあ、文章の理解なんて人それぞれと言えばそりゃそうですから、もしかしたら池田先生は読まれた上で、サマーズは政府介入や労働組合が失業の最大の理由だと言っている!と思われたのかもしれませんが。
なので、このサマーズのエッセイの中から失業[追記:の原因]に関する部分を訳してみる事にしました。どう思われますか?あと、池田先生がこのエントリーで触れているマンキューのブログエントリーも、また後で訳しておきます(追記:訳しました)。でも、「べ、別にマンキューの事が好きなんじゃないんだからね!!」
Concise Encyclopedia of Economics 失業 ローレンス・サマーズより

何が長期の失業を生み出すのか?
失業について完全に理解するには、記録されている長期の失業の原因について考えてみなければならない。実証研究の証拠は、原因の二つは福祉の支給と失業保険であることを示している。政府によるこれらの補助プログラムは二つのルートで長期の失業発生につながっている。
まず最初に、政府補助は働いていないし仕事を探してもいない人達に仕事を探していると述べる理由を与えていて、これが計測される失業者の数を増やしている。たとえば、福祉受給には労働登録[work-registration]が必要な為、そうでなければ労働力に入っていないはずの人達が入っているかのように登録せざるを得なくなる。この必要は実質的に労働力のなかの失業者の数を増やしているのだ。これらの人達は本当は非雇用者[nonemployed]、つまり仕事を探していない人達と、分類されるべきなのに。
Aid to Families with Dependent Children(扶養の必要な子供のいる家族への補助)とフード・スタンプ・プログラムへの登録の州のデータを使った調査において、私の同僚のキム・クラークと私は労働登録が実は計測される失業を0.5から0.8%ポイントも増加させている事を発見した。もしこの関係が2005年でも成立しているなら、この登録の必要性は計測された失業者数を75万から120万人増加させている事になる。(受給のためには)仕事を探していなければならないという条件がもしなければ、これら多くの人達は失業者として数えられてはいなかっただろう。どうように失業保険も人々に保険の受け取りのため彼らが職探し中だと述べさせる事で、計測された失業者数を増加させている。
二つ目は、政府の補助は、働かないインセンティブと[働かなくても大丈夫な]お金[the means]を提供する事で長期の失業を増やしている。個々の失業者は「留保賃金」、つまり働く為に要求する最低の賃金レベル、を持つ。失業保険とその他の社会的補助プログラムはこの留保賃金を高めて、失業者をより長く失業のままに留めるように作用する。

また失業保険は個人が職から離れている期間を延長させる。クラークと私は失業保険の存在が3ヶ月以上の失業期間(の労働者)の数をおよそ倍にしていると推計した。もし失業保険が廃止されたら、失業率は0.5%以上下がるだろう。これは失業者が75万人も減るという事だ。多くの人が申請に必要なだけの期間を働いていなかった為、実は失業者の半分以下しか失業保険をもらっていない事を考えると、これは更に重要性をます。
長期の失業のまた別の原因は労働組合である。競争的市場での賃金率を越えた組合の高い賃金は、経済の組合化された分野での雇用の低下を招くだろう。また、そのような組合による高い賃金を失った人達は、別の低賃金の職につく事に多くの場合、抵抗感をもつ。たとえば、1970年から1985年まで、50州とコロンビア特別区での組合組織率のおおよその平均であった20%を越えた組織率をもつ州は、もしその州に組合がなかった場合と比べて、1.2%ポイントの失業率の増加を経験していた。この事の意味を理解する為、1.2%ポイントは1970年から1985年までの通常時における失業率の上昇の60%に当たる[事を述べておく]。
長期の失業が、労働力供給に干渉する政府介入と組合により引き起こされる事は間違いない。しかし、(保守派経済学者の一部がするように)失業の大部分は、経済への政府介入や失業者の側の労働意欲の欠落に責任があるとするのは大きな間違いである。失業は、福祉国家[の誕生]と労働組合の広まり以前の、19世紀後半や20世紀初頭などでも深刻な問題であった。失業は当時、そして今も、一般的なマクロ経済の条件に密着に関連している。合衆国の失業率が25%に達した大恐慌は、融資・資金(市場)の崩壊が及ぼすダメージの古典的な例である。その頃より、ほとんどの経済学者は失業は労働者の労働意欲の変化ではなく、労働需要の変化によって引き起こされるものであり、不況時の失業は非自発的失業であるに同意している。
周期的な変動のことは置いておいても、失業の大きな部分は供給ではなく、需要の要因に関わっている。1990年代初めのニューイングランドでの高い失業率は、ニューイングランドが特化していたコンピューターやその他の産業の落ち込みによるものだ*2。2000年代初期の北部カリフォルニアの高い失業率は、ドット・コム・バブル崩壊によって引き起こされた。ショックの後につづく調整のプロセスは長く、辛いものになる。そして近年の調査は、需要の一時的な減少ですら、職を失った労働者の技能の喪失やその他の理由から彼らがその労働を売る事ができなくなって、失業に恒久的な提供を及ぼす事がある事を示している。よって、失業について研究しているほとんどの経済学者は労働者の訓練と再訓練、そして労働への安定的な需要を維持する為の政府の積極的な役割を支持している。
自然失業率
ミルトン・フリードマンとエドムンドが自然失業率(インフレーションを高めることなく維持できる最も低い失業率)についての概念を一般化するずっと前から、政策立案者達は、低いがゼロではない失業率を求める事で満足してきた。失業率の許容できる低いレベルとはどのレベルなのかについて、過去数十年の間ずっと再定義が行われてきた。1960年代初期には4%の失業率が満足すべきかつ実現可能なものであった。時間がたつにつれ、失業率は上昇していき、相当の期間、それは7%前後になっていた。最近は、5%にまで下がっている。近年の明らかな自然失業率の減少の一部は、より少ない人が転職期間中であること(fewer people are between jobs)と、彼らの転職に要する期間が短くなって来ていることにより、摩擦的失業(transitional unemployment)が減少しているからではないかと私は考えている。組合の力は、国際競争と共に、国内の規制当局の行動・非行動により侵食されてきた。大体において、国際競争は高賃金産業での賃金上昇を抑えてきた。失業率を低くした別の要因は、失業保険によってサポートされる失業者の割合の減少だ。

*1:もとの池田先生のエントリーには「自然失業率」という言葉は一切なしですが。

*2:アップルに代表されるような小さいパーソナルコンピューターを作るメーカーの多かった西海岸側と異なり、東海岸側にはミニコンのDECなどのようなより大きいコンピューターを作るメーカーが多く存在していた。これらがパーソナルコンピューターの一般化により凋落していった。