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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

グレン・グリーンワルド:政治家階級の縁故相続

アメリカの、若く、知的で、非常に強くリベラル/プログレッシブで、毎日長文のブログを書きまくっている*1、まさに「ネットルート」という感じのブロガー、グレン・グリーンワルド、初登場です(多分)。この人は、もともとニューヨークの弁護士だった人です*2が、今はプロのブロガー(というのか?)に転進して、さらに3冊の本を出版されました。大統領選前、他のリベラルがオバマ、ラブラブ!!だった時から、結構オバマに厳しかった人です。当選後、オバマが自分の言葉通りリベラル/プログレッシブというより中道なのを政権人事で色々と示していって、誤解していたリベラル/プログレッシブが動揺するなか、ザマミロ的なエントリーを書いてはりました人でもあります*3。今回、彼がアメリカ政治の世襲化について書いてられました。日本でも世襲が多いですが、まあこれはどこでも残念ながらある問題なので、アメリカへの親近感を感じるために訳しておきます(なんやそれ!)。
政治家階級の縁故相続  グレン・グリーンワルド 2008年12月3日

ビル・クリントンは昨日、彼がアメリカ上院での妻の後を継ぐ*4という噂をわざわざ否定しなければならなかった。彼女の議席への候補にはまだ、ジョン・F・ケネディーの娘(カロライン)ロバート・ケネディーの息子(RFK,Jr)、そしてマリオ・クオモの息子(アンドリュー)が含まれている。イリノイでは、上院でのバラク・オバマの議席への有力候補は*5ジェシー・ジャクソンの息子(ジェシーJr)だ。デラウエアでは、ジョー・バイデン*6の後を継ぐのはその息子のボー(Beau)だと噂が広まっていた。彼がイラクで従軍するためにその噂を否定すると、実際の後継者の指名−−(ジョー・)バイデンを長らく補佐してきたテッド・カウフマン(Ted Kaufman)−−が「地元の民主党員を怒らせた。彼らは、これが2010年の上院議員選でバイデンの息子のボーを当選させる為の猿芝居だと考えている。」
同じ頃、アラスカでは、リサ・マコウスキー(Lisa Murkowski)が昨日、サラ・ペイリンへ2010年に彼女への挑戦をするなと警告した*7。リサは、彼女の父がアラスカ州知事になった時にその後継者として父に指名された。この警告は、[現アラスカ州知事の]ペイリンがリサの父を知事選で破った事による、二人の諍いの副産物だ。フロリダでは、メル・マルチネス(Mel Martinez)が2010年の再選を目指さないと公表した途端、現大統領の兄弟であるジェブがその席を目指して出馬するのではないかと報道されるようになった。これらは全て、過去2週間の間からのものだ。
上院だけ−−下院の事はいうに及ばず−−でも、文字通りその議席同様のレベルの公職を父親かもしくはその他の近い親族が占めていた人々によって埋め尽くされている(これらのリンクは、近い家族が以前に高位の公職についていた少なくとも15人の現職アメリカ上院議員−−15人だ−−へのものだ。)そして、勿論、去り行きつつある現大統領は以前の大統領の息子で、以前の上院議員の孫である。
これは、少しばかりやり過ぎというものではないか?我々の政治/メディア階級が一般的に、緊密な近親相姦じみた縁故主義に満ちていることは事実だ。実質的に、全てのネオコンサーヴァティブの「インテリゲンチア」(この言葉を可能な限りルーズに使っている)が、縁故による後継への巨大な賛歌である−−クリストル家、ケーガン家、ポドレツ家、ルシネーン・ゴールドバーグとその息子のルーク。ティム・ラサート*8が亡くなった際、NBCニューズは興奮気味に彼の息子を雇った。マイク・ワラス*9FOXの日曜番組のホストをしている。この国で最も影響力のある政治オピニオンのスペースであるニューヨークタイムズOp-Edページには、タイムズそのものと同じく、親族による後継ぎとコネが満ち満ちているメディアスター達と政治家達--そしてロビースト達政党の政治工作者達、それから有力な政府高官達--の間での婚姻関係は、今では16世紀ヨーロッパ宮廷での王侯貴族達の間での政略結婚よりも更に当たり前のものになっているのだ。
しかし、選挙で選ばれる公職への、この親子、兄弟や伴侶による後継へのこの固定化は、非常に問題のあるものだ。たしかに、個々のケースでは、こういう縁故や家族の名前から利益を得た者の中にも実力のある有能なものもいる事は真実だ。しかし、政治権力の近親者への委譲が−−ほとんどそれが当然のこととしてみなされるほど−−今では一般化してしまっているという事実は、非常に反民主主義的だ。選挙で選ばれる公職にまるで世襲貴族であるかのような権利を持つ家族の数は明らかに増加していっている。定義により、それは選挙による指導者の選出において、能力の役割や民主的な説得の必要性を引き下げてしまっている。そしてその代わりにこの世襲制は、隔絶され、近親相姦的で、説明責任のない、特権で膨れ上がった首都の文化を増長しているのだ。
我々の政治の貴族化についての説明には多くの要素がある。政治家達を王族や有名人達と同じプリズムで覗いていれば、彼らの家族に対する興味と愛情を持つようになるのは自然な事だろう。有名人の赤ちゃんの写真に有名人雑誌が何百万ドルも支払ってもちゃんと元が取れるようにしているのと同じ非常に悲しいメンタリティーが、多くの人達に彼らの政治的スターの息子や、妻や、兄弟たちへの積極的な投票を行わせている理由の一部だろう。またそれとは別に、アメリカの急速に悪化していく金持ちと貧困層との間のギャップが、社会を機会[が与えられるか]と[権力・権威への]アクセス[があるかどうか]によって階層化していて、能力とは関係のない貴族文化を生み出していっている。
さらに、現職の強力な制度的強みによって、特定の家族のメンバーへの継承の為に資源やその他の好意などが集中するのだ。そして忠誠と愛情は家族のつながり以外の何の理由もなく受け渡されていく。そして、多くの情報をもたない有権者達は−−やる気がない上に、ゴシップネタに取りつかれている我々の政治メディアとともに――覚えのある家族の名前に大きなプレミアムを置いた上に、家族での世襲をさらに助けるような勘違いまでしてくれるのだ(上院選挙でボブ・ケーシーとジョン・スヌヌに投票した−−そしてハロルド・フォード、ダン・ボレン、コニー・マック、そしてビル・シャスターを下院に当選させた−−人達の内のどれだけが、間違って同じ名前の、それとも似たような名前の彼らの父親に投票したつもりでいただろうか?*10
世襲はアメリカの政治史においてこれまでもなかったわけではないのだが、かつてはかなり珍しかったのに今では充満してしまっている。ワシントン・ポストのダナ・ミルバンクが2005年にこう書いている。

少なくとも18の上院議員、数十の下院のメンバー、そして何人かの政権高官は家族の遺産から恩恵を受けている。現代のワシントンは、おしろいをふったカツラのないルイ14世宮廷に似ているのだ。

その大きな変化を明らかにしてくれるのが、1929年のタイム誌からの記事だ。それは父親を悲劇的な火事で失った後、そのミネソタ州議会での議席を選挙で受け継いだ息子という、当時は珍しい事態にたいする軽い不満を述べたものだ(記事によると、その新しく議員となった息子は「非常に魅力のある若い男性で、完全に北欧系の外見をしている」という。)この一家族の世襲について、タイムは厳しく、「公職の長子相続や世襲などはアメリカの伝統に居場所はない。」と述べている。
これはもはや明らかに事実ではない。バラク・オバマンの成功の最も喜ばしい側面の一つは、そしてこれに関してはサラ・ペイリンやビル・クリントンのような人達の[政治的]上昇も同じなのだが、家族のコネなしに自分の力だけ[でのし上がってきたことだ]。しかし、この事を[わざわざ]述べる事ですら、能力のある者が自分の力でのし上がっていく事が一般的ではなく、ほとんど完全に例外になってしまった事をあらわしている。私達がいまでは大統領を王侯のように扱い、またその様な力を振う事を期待するのは、我々がどういう訳か、ポトマックにあるヴェルサイユによって、その膨れ上がった、デカダンな閉鎖性とともに、支配されてしまっている事と整合的ではある。
追記:コメントセクションで、ブレトン・ウイリアムス−−デポウ大学のアメリカ憲法と法律史の教授−−が本当にひどい非民主主義的な縁故による世襲の一例を挙げている:民主党のブルードック(民主党内の保守派グループ。)ダン・リピンスキー下院議員だ:

長期にわたって現職であった彼の父、ビルは、2004年の民主党の指名選挙に出馬して、簡単に勝利した。一般選挙の数週間前、彼は引退し、イリノイ州の民主党委員会は深夜に、密室で、15分間、彼と会談して、彼の息子を新しい候補とする事を決めた。その息子は、テネシー中部に住む、テネシー大学の助教授だった...
さらにひどい事に、家族の友達であった[ライアン・チャラダ]が選挙資金もないまま2004年の共和党候補として出馬し、名ばかりの選挙相手としてダンを助けた。

イリアムズ教授が述べているように、リピンスキーの息子はそれ以来、民主党エスタブリッシュメントから、特にラーム・エマニュエル*11から、民主党予備選でのプログレッシブな(そして能力のある)競争相手を潰す為の強力なサポートを受けてきている。彼はその父から議席を手渡しで受け取ったのだ。

*1:そしてどんどん追記を付け加えていく。

*2:なので法律関係のエントリーが多い。

*3:勿論、そんな事ははっきりいいませんが。

*4:上院議員のヒラリー・クリントンが国務長官となるので、上院議員を辞職する。

*5:ヒラリー同様、上院議員であるオバマは大統領となる為に上院議員を辞職する。

*6:副大統領となる為、上院議員を辞職する。

*7:どちらも共和党で。マコウスキーはアラスカ州選出上院議員

*8:政治番組の有名な司会者。

*9:ジャーナリスト。CBSの60ミニッツなんかに出ている。

*10:アメリカの場合、"Jr"がついただけの同じ名前の親子がよくいますから。

*11:オバマの主席補佐官。