P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

マンキュ−:AS、AD、そしてニューディール

ここで触れたマンキュ−によるクルーグマン名目賃金と雇用についてのノートへのコメントです。読んでみると確かにまあ確かに言ってる事は最もなんですが、だがこれも実証の証拠がないとどうともならんなぁ、という感じです。投資そして総需要に与える信頼の効果について語ってるんですが、しかしブラッド・デロングが述べているとおり総投資がニューディール期間中に上昇していたのなら、マンキュ−の語っている事が、マンキュ−の望む方向とは逆の方向とは逆向きで働いたのじゃないかとも思えますし。
AS、AD、そしてニューディール  グレッグ・マンキュ− 2008年12月3日
ポール・クルーグマンが、学部生向けマクロ経済学講義の教師に馴染み深い総供給と総需要のモデルを使ってニューディールの賃金政策を分析した良いノートをポストした(PDF)(http://d.hatena.ne.jp/okemos/20081205/1228443877:title=翻訳)]。ポールの議論の要点は、大恐慌期の経済は流動性の罠に陥っていたのであり、その為にAD曲線が垂直になるので、AS曲線を悪化させて[左へ]シフトさせるような政策も短期の均衡産出に影響を与えることがなかったというものだ。そのため、通常では悪い結果を招く、労働供給をカルテル化するような政策も、1930年代の異常な状態の下では悪いものではなかったといという事になる。(この手の議論の更によく出来たバージョンについては、Gauti Eggertsson(PDF)をみてくれ。)
AD−ASモデルの中に留まっていても、反対の議論を行う事が可能なようだ。長期の投資の計画について考えている企業のマネージャーを想像してみてくれ。大統領がその企業の労働者がカルテルを結成する事を奨励する政策を公表したばかりのところだ。それは計画をどうするかについてどのような影響をマネージャーに与えるだろうか?止めてしまう可能性が高い。しかし、投資支出は総需要の一部だ(実のところ、そのうちのもっとも変動の激しいものの一つだ)。それゆえ、その政策はAS曲線と共に、AD曲線を景気後退の方向へシフトさせてしまうかもしれない。
一般的に、総需要の状態は信頼と呼ばれるはっきりしないものに依存している。長期的にADを悪化させかねないものは全て、短期でも信頼とADを損ねてしまいかねない。ADとASを分ける教科書のやり方は、学部学生がクラスで勉強に集中させるのには有用だが、現実の世界の物事はそうそうはっきり分かれているものではないのだ。