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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

男女の違いと競争への選好、あるいは経済学者は少年ジャンプの読みすぎか?

経済学 ジェンダー

本日のNPRのOn Pointは、 マッチョの終わりというテーマを取り扱っていました。不況による失業の影響はアメリカ(そしてヨーロッパあたりでも)男性に多く偏っているらしく、その事がアメリカでのマッチョの終わりにつながるのだという文章をForeign Policyという雑誌に書いた保守派の若手論客がメインゲストでした。アメリカでは、女性の大学進学・学位修得率が男性のそれを上回ってきており、大都市だと就労している20代女性の平均学歴が就労している20代男性のそれを上回っている為に、彼女達の中位所得が男性のそれを上回っているそうですが、こういうことは当然そのうちに社会構造の変化をもたらすわけで、SFファンとしては昔のフェミニストSFやハインラインを思い出してわくわくします。ですので興味を持ち訳そうとおもったのですが、その若手保守派論客の文章はちょっと長いのと、同じ番組にゲストで出ていた女性経済学者のブログエントリーがこの主題についての簡単なまとめ兼リンク集になっていたので、そのブログエントリーの方を訳してみました。で、そのエントリーの終わりにも書かれてますが、男性が競争の徳を過剰に強調するのなら、そして経済学界が男性中心の社会である事を考えると、経済学の競争の強調自体も単なる男性過多の結果に過ぎない面もあるのかもしれません。個人的にはほんとにそうじゃないかと、思うんですよねぇ。


ヒ-コノミー(The He-conomy): 男性はリスクを取り過ぎるのか? ナンシー・フォルブレ (Nancy Folbre) 2009年7月6日
なんだかしゃっくりでもしてるみたいに響きますけど、ヒ−コノミーという言葉は、この不況において男性がより大きいダメージを受けている事を強調する為に作られたいわゆるヒ-セッション(he-cession)*1について読んでいる時に頭に浮かんだものです。
私はヒ-セッションというコンセプトを気に入っているわけじゃないのですが、でもそれは経済問題の理解についての性別のインパクトを明らかにはしています。男性と女性の選好の違いがどういう意味を持つかについての近年の実験がこのことを明らかにしているようにです。
男性の雇用は、賃金はより高いけれども景気変動の影響をより強く受ける製造業や建設業といった産業への偏りがあります。失業の発生が男性に偏っていることは、大統領経済諮問委員会による財政刺激策のインパクトについての初期のレポート(PDF)の中でも議論されています。
この問題は、USA Today *2の論説欄でも「アメリカ男性の衰退」という恐ろしげなタイトルで父の日のあたりに劇的に取り上げられました。その筆者、デビッド・ジンセンコ(David Zincenko)は今年の終わりまでに男性よりも女性の就労者の方が多くなっているのではないかという懸念を表明していました(Economix における私の同僚ブロガーCasey Mulligan のポストを引用して)。
私にはジンセンコ氏の理屈が理解できていません。女性の就労が少なければ、男性が幸せになるというものではありませんから。所得を得る人が二人いる家計は(所得のソースが)より多様化されているわけですから、所得を得る人が一人だけの家計よりも(経済的)リスクに対してより安全であるわけです。他のフェミニスト・ブロガーも同様の反論を述べています。
The Nation*3のベッチー・リード(Netsy Reed)は、不況が男性に家族の責任をより多く果たさせてジェンダーの役割を変化させる効果をどのようにして持つのかについての興味深い考えと共にこの議論に参加してきました。
そしてForeign Policyにリーハン・サラム(Reihan Salam)がマッチョの死という文章を載せて一斉射撃を行い、かなりマッチョなやり方で、現在の経済危機は男性支配の投資銀行業界における「ペニス競争」の直接の結果であると断言しました。
息がかなり苦しくなってきたので、議論を離れてJournal of Economic Literatureの最新号を読んでみると良い気分になれました。その中で、レーチェル・クロソン(Rachel Croson)とウリー・ニージー(?、Uri Gneezy)が性別の違いに関する最近の実験についてのレビューを行っていました。
経済学関連の実験、これは時には研究室外でも行われますが大抵は研究室の環境内でおこなわれ、絡み合った要因を注意深くコントロールして実験参加者の中の違いが持つ効果を見出します。たとえば、ランダムに選ばれた男性と女性が、報酬水準が異なる二つのゲームのどっちを選ぶかを尋ねられたりします。それらはリスクや競争の程度に関しての違いがあるのです。
かなりの証拠が、女性は男性よりもリスク回避的であることを示しています--おそらくは、男性が自身の成功をより過信するからです。クロソン教授とニージー教授は金融のマネージャー達や専門のビジネスパーソンの間で性別間での明らかな違いがない事を述べています。そういった仕事についた女性は(女性の間で)珍しいタイプなのか、あるいは--よりありそうなことですが--彼女たちはその職場での規範に対応し受け入れたのでしょう。
競争に関する態度についても興味深い性別による違いがあります。ミュリエル・ニエダール(Muriel Niederle)とリース・ベスターランド(Lise Vesterlund)による判りやすいタイトルの「女性は競争を避けるのか?男性は競争しすぎか?」という論文は、勝者一人勝ちの数学ゲームと、きちんと答えられた問題ごとに報酬が支払われる数学ゲームとの間でどちらを選ぶかについて、男性も女性もきちんと情報に基づいた判断を下してはいないようだという結果を報告しています。成功の可能性の高い女性(過去の問題回答のパフォーマンスに基づく)ですら競争を避けようとし、失敗の可能性の高い男性が競争をしようとするのです。
フォーブス誌は最近、リーハン・サラムのマッチョの終わりという主題をすこしばかり予想していたかのような記事を載せていました。男性のマネージャーは自信過剰になりがちで、女性のマネージャーは金融問題の尻拭いに大きな役割を果たしているというのです。
歴史的に男性に支配されてきた経済理論は、リスク・テーキングと競争の利点についてもしかすると強調しすぎてきたのでしょうか?その問題についてはっきりと答える事のできる実験さえ、もし出来たならば。

*1: 「不況」を意味するRecessionと男性の意味の「He」をかけている

*2:アメリカの有名新聞。

*3:アメリカの左派系雑誌。