P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

Rajiv Sethi:需要と供給の部分均衡分析について  

一つ前で翻訳したRajiv Sethiのポストの続きの翻訳です。この賃金カットが雇用を増やすかどうかについての議論はまだ続きそうですね。ところでこのRajiv Sethiのポストの中でも強調されてますが、扱われている「賃金カット」とは一企業内だけのものではなく、経済全体に及ぶようなもののことです。勿論、直接的に議論の対象になっている最低賃金は全労働者に直接係わるものではないですが、その規模を考えれば、最低賃金カットの影響は部分均衡分析では取り扱えない、というのがこのポストの述べていることです。


需要と供給の部分均衡分析について  Rajiv Sethi 2009年12月17日
名目賃金の変化の総需要への効果に関する私の先のポスト(和訳)は少しばかり注目を集めたので、幾つかの点について明確にしておきたいと思う。
名目賃金の低下は総需要を低下させるのか増加させるのかを主張するのことが、そのポストの目的ではなかった。目的は、一部の人たちがその質問を考える為に持ち出す需要と供給の単純な部分均衡モデルはそれを答えるには単純に力不足だということを主張することだったのだ。その効果はミクロ経済学の教科書から簡単に導き出す事ができるという見解−−ブライアン・キャプランによって表明され、タイラー・コーエンによって支持された−−に対する反応であったのだ。そして、その問題に取り組むために部分均衡分析を越えてほしいというお願いであった。
タイラー・コーエンはこれに対して別の需要と供給の部分均衡モデルを持ち出して答えた:

独占企業のグラフを描き、限界費用曲線を下げてみてくれ。それで何が起こるかみて欲しい。Sethiの最初のメインのパラグラフはこのメカニズムを単に考えておらず、代わりに限界での変化は意味を持たないと仮定している。

これはマーク・ソーマのコメント欄に書かれたものだ。同様の主張が彼自身のページでも表明されている:

これは単純なストーリーなのだ。最低賃金を下げれば、マーケット・パワーを持つ企業は一般的にいって労働者をもっと雇用しようとする。(Sethiの批判はこのメカニズムを考慮する事を拒んでいるが、しかしただMC曲線をシフトさせて何が起こるかを見てみればいいだけだ。)

では、MC曲線をシフトさせて、何が起こるかを見てみよう。しかし一つの企業だけでなく、最低賃金などは払ってはいないものも含めた企業の集団全体を考えることを忘れないで欲しい。そして、最低賃金労働者が現在購入している財とサービスをつくっている全ての企業の需要曲線もちゃんとシフトさせるように。さて、では最低賃金の低下の結果として総需要が上昇するのが自明であるのかどうか、私に答えて欲しい。
自明ではない。この問題に取り組みには、複数の企業と、賃金と資本の所得からの支出パターンがちゃんと特定化され、そして今現在の消費にたいするなんらかの代替財(金融資産のようなもの)が存在するモデルが最低でも必要なのだ。そうしたければコンピューター上でこのモデルをシミュレートしてみて、何が起こるのか確認してほしい。私は何がおこるのか知りたいと思う。しかし頼むから名目賃金の変化の総需要への効果について、到底力不足の入門テキストのモデルに基づいて断言する主張は止めてもらいたい。
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マーク・ソーマはさらに述べている。ポール・クルーグマンまた。アンドリュー・ゲルマンは実行される可能性がない政策*1についての議論が行われているという事実に(当然ではあるが)困惑している。マークは少しばかり理由を述べている。私もこの事についての私の考えをすぐに述べようとおもう。

*1:最低賃金切り下げ。