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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

エリート大学の価値再考

いまさらなんですが、2月のデビッド・レオンハートの教育関係のブログエントリーを見つけたので訳して見ました。やっぱり教師なので、こういう話は興味があります。 
いつものように、もし誤字・誤訳などがありましたらコメント欄にお願いします。
 
エリート大学の価値再考 デビッド・レオンハート 2011年2月21日

10年前、二人の経済学者、ステーシー・デール(Stacy Dale)とアラン・クルーガー(Alan Krueger)が、エリート大学はその卒業生のほとんどにとって所得の向上の役にはたっていないようだと主張する研究論文を発表した。予想できるように、この論文は非常に多くの注目を集めた。このデールとクルーガーの両氏が研究の新しいバージョンをつい最近終えた。そして、より最近の大学卒業生に加えて40代、50代の人々も含めたずっと多くかつより良いデータに基づいたこの新しいバージョンもまた同じ結論にたどり着いたのだった。
この結論があまりにも常識に反していること、そして一部の経済学者がこれに懐疑的であることをかんがみて、私はこの新しい論文にブログのポストをひとつ充てたいと思う。
出発点は、エリート大学の卒業生はそれほどエリートではない大学の卒業生よりも多くを稼ぐという周知の事実だ。たとえSAT*1のスコアや卒業生の成績をコントロールしても、このパターンは保持される*2。このことからこういったパターンは大学それ自体が所得格差の主要な原因であることを示唆しているように思われる。
しかし、リサーチファームMathmaticaの経済学者であるデール氏、そしてプリンストンの経済学者であり、依然はこのブログの執筆者でもあったクルーガー氏は、彼らの研究に新しい変数を加えた。彼らは学生たちが入学願書を送った大学、そして入学を認められた大学もコントロールとして加えたのだ。
そうすることで、彼らは学生たちについてSATのスコアや成績以上の情報を取り込むことができた。デュークやウィリアムズ、あるいはイェール*3に願書を送った者は、同じような成績だがそういう大学に願書を送りはしなかった者よりもずっと自信と覇気があるというシグナルを送っているのかもしれない。競争率の高い学校に入学を許されたものは、その成績には現れないが、入学事務局には見分けのついたなにかのスキルを持っているのかもしれない。
二人の経済学者がこの新しい一連の変数を加えてみたところ、所得の格差が消えた*4。実のところ、学生たちが願書を送った大学を加えただけで、彼らがどこから入学を認められたかは加えなくても、それは消えてしまったのだ。SATの成績が1400点でペンシルバニア州立大学(ペン・ステート)に通ったがペンシルバニア大学(ペン)にも願書を送った学生達は、平均的に、1400点の成績でペンに通っていた学生達と同じ所得を得るのだった(U Pennと呼ばれるペンシルバニア大学の方が、Penn Stateと呼ばれるペンシルバニア州立大学よりも上扱い。))。
「たとえ入学を認められなかったとしても、願書を送ったというだけで、あなたについて多くのことがわかるわけですよ」、とクルーガー氏は語った。学生が願書を送った中でもっとも入学の難しい大学の平均SATが実際に通った大学の平均SATよりも、その学生の所得をよりよく予測できると彼はのべた。(大学の入学の難しさは、入学を認められた学生の平均SATスコアと、Barron's*5が各大学につける入学難易度から計られる。)
しかし、いくつかの主要グループはこのパターンにうまく当てはまらないことを指摘しておくべきだろう。黒人学生、ラティーノ学生、低所得家族からの学生、そして両親が大学を出ていない学生だ。「彼らについては、より入学の難しい大学に入学することで、その所得が大きく上昇していた」、とクルーガー氏は書いている。なぜだろうか?多分、彼らはそうでなければ持ち得ない職業上(professional)のコネクションを得るのだろうか。あるいは、彼らは中産階級か富裕層ならすでに高校か家庭で身につける習慣なりスキルを習得するのか。
この発見は、新しい研究が、Howard、MorehouseやSpelmanのような歴史的に黒人大学であったいくつかの大学を含んでいるのでとりわけ意味がある。それらの大学はペンや、ウィリアムズやその他のエリート大学ほど入学の難しい大学ではない。エリート大学よりも歴史的に黒人専門であった大学をえらぶ生徒は彼らの将来的な所得のポテンシャルを下げてしまっているのかもしれない。
もともとの論文はかなり狭いデータを使っていた。1976年に大学一年であった生徒の自己申告での1995年の所得だ。この新しいバージョンは、より長期の期間においてずっと信頼できる所得のデータを提供する社会保険記録を使っている。1989年に大学一年であった学生も取り込み、2000年代中盤までの彼らの所得をフォローしている。すべて合わせてこの論文は、1万9000の大学卒業生をカバーしている。
私が見て、この論文の主な問題点は、ペン・ステートといったあまりエリートではない方の大学ですら、かなりエリートであることだ。(この研究が対象とした卒業生の卒業大学のフルリストは下にある。)これはこの論文の発見を疑問に付すようなものではない。コロンビア大ではなく、たとえばXavier大*6に行くことにしたとしてもそれが将来の所得に影響しないというのはすでにとても驚くべき結果だ。
しかし、将来の研究が大学市場のほかの部分についても目を向けてくれたなら、すばらしいことだ。たとえば、別の大規模な研究は卒業率の低い大学に進学した学生は卒業する可能性が低いことを発見している*7。そしてこれは彼らの所得に実に多大な影響を及ぼすことなのだ。私はまた、4年制大学への入学を認められたのにもかかわらず、学費を安くあげるために、後に転校することを計画して最初にコミュニティカレッジへ進むことにした学生たちについても興味がある*8
もちろん、いつの日にか研究者たちが所得以外のことについてもキャリアを分析できるようになれば、それも素晴らしい。最近広まっている幸福についてのサーベイもいつかは経済学者たちに教育とキャリア上の満足の関係についての研究を行わせてくれるようになるかもしれない。
クルーガー氏は次のように締めくくっている。

学生たちへのアドバイス:通うに値する学校は君を入学させない学校だけだ、などとは信じないように。大学に行くということが、どこに行くかよりも重要なのだ。学問的な強みが君の興味と合致し、そしてその分野の教育にリソースを振り向けている学校を探しなさい。君自身のモチベーション、覇気、そして才能こそが、卒業証書上の学校名よりも君が成功するかどうかを決めることを認識すること。
 
エリート大学へのアドバイス:もっとも恵まれていない学生たちこそがあなた達の教育から最も多くを得ることができる。金銭的援助と合格判断をしかるべく行おう。

約束しておいたように、この新しい研究に含まれている大学のリストをここに掲載しておく。
1976年サーベイ
Barnard College, Bryn Mawr College, Columbia University, Duke University, Emory University, Georgetown University, Miami University, Morehouse College, Northwestern University, Oberlin College, Penn State University, Princeton University, Smith College, Stanford University, Swarthmore College, Tufts University, Tulane University, University of Michigan, University of Notre Dame, University of Pennsylvania, Vanderbilt University, Washington University, Wellesley College, Wesleyan University, Williams College, Xavier University, Yale University

1989年サーベイ
Bryn Mawr College, Duke University, Georgetown University, Miami University of Ohio, Morehouse College, Oberlin College Penn State University, Princeton University, Stanford University, University of Michigan, University of Pennsylvania, Vanderbilt University, Washington University, Wellesley College, Wesleyan University, Williams College, Xavier University, and Yale University

*1:アメリカの大学進学適正試験。

*2:つまり学力が同じであっても、エリート大の卒業生の方が非エリート大の卒業生よりも稼ぐということ。

*3:デュークやイェールは日本でも知られた有名大学ですが、ウィリアムズもまた、おそらく日本ではそれほど知られていないものの、リベラルアーツのエリート大学です。

*4:つまり同じような大学に願書をおくり、同じような大学から入学を認められ、そして同じような成績を(そしておそらくモデルに入っているであろうその他の特徴についても同じような)学生は、同じ所得を得るという結果が出たということ。

*5:経済誌。

*6:当然ながら、コロンビアはエリートで、Xavierはコロンビアほどエリート大ではないです。

*7:正直、そりゃそうじゃん、という気もするが、おそらく、通常卒業できるかどうかにかかわると見られるいろいろなコントロールを入れた上でも予測される卒業率が低くなるとかなんとかいうことなんでしょう。

*8:アメリカの大学の学費は単位当たりで決まっており、かつよく知られているようにくそ高いのですが、コミュニティカレッジだとその1単位当たりの学費がずっと安くなります(3分の1とか5分の1とか)。なので、将来4年制大学に編入することにして、編入予定の学校が受け入れてくれるだけの単位をコミュニティカレッジで取ってトータルの学費を安くあげる学生が多くいます。