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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

ミット・ラムニーの1万ドルの賭けと、民主党の高笑い

またまたTPMから。
2012年アメリカ大統領選挙へ向けての共和党中枢にとっての本命、元マサチューセッツ州知事ミット・ラムニーと、しばらく前までラムニーへの対抗馬として人気急上昇中だった(そして今はその立場をギングリッチに奪われてしまった)テキサス州知事のリック・ペリーがやりあって、その結果に民主党が喜んでいるそうです。


マイケル・ムーアの映画Sickoでも描かれていたようにアメリカには日本の国民健康保険のようなシステムはなく、健康保険が必要ならば民間の健康保険を購入する必要がありました*1
しかし州レベルでは話がちょっと違っており、マサチューセッツ州ではミット・ラムニーが知事であった2006年に州の健康保険制度を導入していました。
この制度は州が規制する民間の健康保険を購入する事を州民に強制するもので*2、元々は1990年代にクリントン大統領による連邦政府による健康保険の提供を阻止する為に保守派から市場に基づいた国民皆保険の実現策として提案されたものでした。
この健康保険制度をミット・ラムニーは自著 No Apologyの中で自賛して、「同じものを国の全国民についても実現することができる」と書いていたのですが、ミット・ラムニーにとっては残念なことに、それは実現されてしまいました。
オバマ大統領によって。
大統領の健康保険制度(オバマケアと呼ばれます)はこのマサチューセッツの健康保険制度に基づいたものだったのです。
その為このマサチューセッツの健康保険制度が、もともとは保守派の提案に基づいたものだったのに、共和党員、少なくともそのコアにとっては嫌悪の対象となり、ラムニーにとっては非常に厄介なものとなってしまいました。
共和党員のコアが反オバマケアなのでオバマケアを批判しなければなりませんが、そうすると自分の実現したマサチューセッツ州の健康保険制度(ラムニーケアと呼ばれます)はどうなんだ?と突っ込まれます。
あれは間違っていたとは今更言えませんから、ラムニーケアとオバマケアは違うと言うほかないのですが、そんな事は他の共和党大統領候補に立候補している連中が許しませんし、さらには共和党からの攻撃をかわす為にもオバマが許しません。
どんどん突っ込んできます。
そんなさなかに著書No Apologyのペーパーバック版が出版されたのですが、なんとその中では上に引用してある部分が削除されていました。
下のビデオはその事も含めてラムニーケアを批判するリック・ペリー陣営のビデオです。
銃は絶対庇護するが、困った人を助けるのには絶対反対の共和党らしいオドロオドロしくてなかなかに面白いビデオなのでちょっと観てみてください。

勿論、ラムニー陣営はこの削除を政治的に都合が悪くなったからとは認めていません。
ペーパーバック版出版時点での政治的状況を考慮してアップデートしたと言っているそうなのですが...これって認めてるのじゃないの?


とにかくラムニー陣営からすると都合が悪いから修正したということではないそうなので、共和党候補同士でのディベートにおいてリック・ペリーからまた改めて突っ込まれた際、ラムニーは、そんな事はしていない、1万ドル賭けようか?とペリーに突っ込みました。

ペリーはこれを受けなかったのですが、ここに好機を見たのが民主党でした。
民主党としては共和党候補の中では一番一般受けしそうなラムニーをここで潰しておきたいところです。
民主党はこの1万ドルの賭けの申し出を、ラムニーが庶民の事を理解していない金持ち*3として描くのに使うことにしました。
こういう「あいつは庶民とは違う金持ちだ」戦略はこれまで共和党が得意としてきたものですが*4民主党も好機を逃さないようになってきているようです。
結果、twitter上でも#What10kbuysというハッシュタグがつくられ、すぐにトップのトレンド入りを果たしました。
「この1万ドルの賭けを後悔することになるのに1万本のビールを賭けてもいいよ」とは民主党のストラテジストはツイート。
ドルはやばいが、ビールをOKなんです(笑)。
世の中、そういう細かいが大切なんですよねぇ、怖い怖い(笑)

*1:65歳以上の高齢者へのMedicareと貧困層へのMedicaidという健康保険制度は連邦政府が提供していますが。

*2:購入しないと納税時に[http://en.wikipedia.org/wiki/Massachusetts_health_care_reform:title=税控除額が減らされます]

*3:実際、ラムニーは金融業で儲けた[http://econdays.net/?p=5456:title=金持ち]です。

*4:たとえば2004年の大統領選挙での共和党のジョン・ケリーへの攻撃とか。