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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

はっきり言っちゃいましょう、問題は共和党だって!

マン オーンスティン

中道のシンクタンクブルッキングス研究所トーマス・マン(Thomas Mann)と、保守派シンクタンクのAmerican Enterprise Instituteのノーマン・オーンスティンが書いたIt's Worse Than It Looksがワシントンで話題になっているそうです。この本は、今のアメリカ政治の問題は共和党にあるという事を主張した本で、詳細に述べられているという事を置いておくと、その内容自体は知っている人はとっくに知っていることですが、重要なことは保守派のシンクタンクメンバーも含めた著名な議会研究者がその事をおおっぴらに認めたという事かなと。いうならば、これまで誰も見ないですませてきたキッチンシンクの蓋をあけて見たような...
後もう一つは、共和党の過激な右傾化を見ないことにしてきたメディアの責任を追求している点です。その為なのか話題になっている割には、政治の本の販促の為の日曜朝のテレビ政治番組への出演がないそうで、クルーグマンお怒りです。*1
その二人が2012年4月12日のワシントン・ポストに本の内容にそくしたコラムを書いているのでそれを訳してみました。
誤訳・タイポなどありましたら、コメント欄にお願いします。
追記:「原文読んでませんが」さんとJAXさんの指摘を受けて修正しました。
追記2:filinionさんとNephren-Kaさんのコメントでの指摘を受けて文章を修正しました。
 
もう言ってしまおう:共和党が問題なんだ。 トーマス・E・マン (Thomas E. Mann)、ノーマン・J・オーンスティン(Norman J. Ornstein) 2012年4月28日
フロリダ選出のアレン・ウェスト下院議員は最近、議会の78人から81人の民主党員は共産党のメンバーだと断言しているところをビデオに撮られてしまった。もちろん議会のどちら側であれ、その中の変人が何かバカげた事をいうのは別段変わったことではない。ウェストの、1950年代のマッカーサーマッカーシーの教本からそのまま持ってきたかのようなこのコメントが特出突出しているのは、議会共和党のリーダーやその他の中心的人物からの批判がほとんど完全にないということだ。大統領選候補たちも含めて。
共和党の中枢がウェストに同意しているという事ではない。こういった極端な発言や見解が今では当たり前のものとみなされているということだ。
我々はワシントンの政界と議会を40年以上も研究してきたが、政治がここまで機能不全に陥っているのは見たことがない。これまでの執筆においては、我々は両党を批判してきた。その正しさを確信して。しかし今日では、問題の中心が共和党にあることを認める以外の選択肢はなくなっている。
共和党はアメリカ政治において、問題をおこすはぐれ者となってしまった。イデオロギーにおいて極端であり、通常理解されるところの妥協をさげすみ、事実や証拠、科学などには動かされることもなく、そしてその政治的対立者*2の正当性を否定しようとする。
一つの党が主流からこれほどまでに離れてしまえば、国の直面する困難に対して政治システムが建設的に対応するのはほとんど不可能となる。
「両党ともそうだ」、あるいは「どちらにも多くの問題がある」というのはアメリカのニュースメディアがそのバイアスのなさを示そうとするための伝統的な逃げの手だが、政治的な分極化を議論するときに政治学者が好むのは一般性と中立性である。多くの様々な超党派グループが共通理解を求めて両党を中道に向かわせるための解決法を提案しているが、こういった戦略も一方があまりにも偏ってしまっている時にはどうにも実行できるものではない。
共和党の重力の中心が大きく右へ移動してきたというのは明らかだろう。下院と上院におけるかつての伝説的な中道、そして中道右派の議員たち、たとえばボブ・ミッチェル(Bob Michel)、ミッキー・エドワード(Mickey Edwards)、ジョン・ダンフォース(John Danforth)、チャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)などを思い出してもらいたいが、そういった議員たちは実質的に絶滅した。
対称的にマクガバン*3以後の民主党は、公民権運動の革命後の数十年において保守的なディクシークラット*4の多くを失いはしたが、より幅広い支持基盤を維持してきた。クリントン大統領以来、福祉改革や財政政策などの案件において中道左派の立場を尊守してきた。民主党は40ヤードラインから25ヤードまで*5移動してはきたものの、共和党は40ヤードからゴールポストの向こう側のどこかまで行ってしまったのだ。
何が起こったのか?勿論、南部の再編成*6以外の力も働いてきた。これは、1973年のRoe対Wadeの判決*7以後の社会的保守派の動員、1978年のカリフォルニアの提案13号*8、1989年の議員報酬引き上げ以来の保守派トークラジオの盛り上がり、そしてFoxニュースと右派ブログの登場などを含む。しかしガチガチの右への真の変化は2つの名前と共に始まる:ニュート・ギングリッチグローバー・ノーキストだ。
1979年に議会に登場した日から、ギングリッチは下院において共和党を多数派にするための戦略を持っていた:議会はあまりにも腐敗しているために、現職、とくに多数派である民主党の現職以外なら誰であれましであると有権者に思い込ませるというものだ。16年かかりはしたが、民主党のリーダーに倫理的な問責をしかけ、彼らに過剰反応させることで共和党員を怒らせて民主党からの法案への反対にむけて団結させ、政治家に対する民衆のさらなる嫌悪感を生み出すためにスキャンダルを利用し、そしてワシントン、民主党、さらに議会を攻撃するための共和党候補を国中からリクルートすることで、ギングリッチはその目的を果たすことができたのだ。
皮肉なことに下院議長となった後、ギングリッチは議会の評判を上げることを望んで、自分の目的にもかなった時はビル・クリントン大統領との妥協も甘んじた。しかしギングリッチが解き放った力は、党派間で存在していたどんな共同体礼節も破壊してしまっていたし、過激で有害な反ワシントンの勢力を活性化してしまった。そして、穏健な共和党議員の議会からの退出を促進した。(1990年代はじめに当選した彼の子供たちの一部は上院へと移り、上院の文化もまた同様に分極させた。)
同じ頃、ノーキストは全米税制改革協議会(Americans for Tax Reform)を1985年に立ち上げ、納税者保護誓約 (Taxpayer Protection Pledge)をその翌年にうちだした。サインしたものは増税を今後絶対に支持しないように縛る(税の抜け道を塞ぐ事まで含めて)この誓約には、協議会によると去年の時点で下院共和党議員242人のうちの238人、上院共和党議員47人のうちの41人がサインしている。このノーキストの税についての誓約は、気候変動などのような他のことについての誓約にまで広がっており、穏健派を追い込むさらなるリトマス試験紙を作り出して、党を超えた提携をほとんど不可能にしている。予備選における右からの挑戦を心配する共和党議員にとっては、こういった誓約にサインしないことはあまりにリスキーなのだ。
今日では、共和党のおかげで妥協というのはワシントンではなくなってしまっている。オバマ政権の最初の二年において、ほとんど全ての大統領からの提案は下院と上院において激しく、憎悪に満ちた、そして全員一致の共和党からの反対に直面してきた。そしてその後には、その成果を否定して政策を撤回させようとする努力が続く。かつてはどの会期の議会においても重要ないくつかの国政レベルについてだけ使われたフィルバスター*9も、通常の妨害手段となり、広く支持されている法案や大統領による指名人事にも使われるようになった。そして上院の共和党議員は承認プロセスを悪用して、消費者金融保護庁のトップのようなポストへの指名人事はすべてブロックしてきた。きちんと成立している法律の執行を妨げるためだけに。
オバマ政権の3年目と4年目においては、大統領と議会多数派が分裂した政府*10は我々がワシントンで見てきた中でももっとも完全な機能不全に近い状態を作り出した。昨年には党派間の分裂が、アメリカの史上初の格付け降格にまでつながったのだ。
金融市場安定と景気回復について、財政赤字と債務について、気候変動と健康保健改革について、共和党はイデオロギーギャップの拡大と党派対立の戦略的利用を図ってきた。大統領選挙と議会で、共和党リーダーは税と支出について妄想的な政策を受け入れて、彼らの党のもっとも大きい声に媚びへつらった。
共和党はしばしば、問題の性質や政策の効果についての無党派の分析を、それが彼らのイデオロギーにそぐわないならば無視してきた。大恐慌以来もっとも厳しい景気後退においても、党のリーダーと外部の協力者たちは経済成長についてサプライサイドに服従することを言い立てていた。そうすることでノーキストの誓約を守ったわけである。それに反する見解には目もくれず。
その結果はほとんど不条理じみている。2009年のはじめ、超党派での健康保険改革案の共和党側の提案者である8人の共和党議員の何人かがその支持を取りやめた。2010年はじめまでには、その他の者達も彼ら自身の提案に反対するようになり、オバマの改革提案の半径一マイル以内に入るような法案への共和党からの支持はゼロとなった。共同提案者の一人であったラーマー・アレキサンダー(Lamar Alexander)上院議員(共和党-テネシー州)はワシントン・ポストのエズラ・クレインに、「超党派だったから気に入っていたが、それに投票することはなかっただろう」と語っている。
そして債務削減の為の討論者のパネルを作るという上院決議の共和党からの7人の共同提案者は2010年1月、彼ら自身の決議に反対投票をした。最低60票という共和党が要求した票数を集めて大統領が勝利したかのようにみえるのを防ぐためだけにだ。
こういった態度は党のリーダー層よりもずっと下にまで浸透している。一般の共和党員は党のエリートが採用した戦略を受け入れて、問題解決のための妥協をさけ、原則にこだわるようになっている。たとえそれが機能不全につながるとしてもだ。対照的に民主党員は無党派と同様に、機能不全よりも交渉を求めている。
民主党も非難されるところがないわけではまったくない。自らも過激な一派を抱えているし、汚い政治手法を求めるところもある。しかしこういった傾向は通常、健全な政治の普通の範囲の外側まで出ていくことはない。どちらかというと、クリントンオバマ政権下において民主党は現状維持の党の傾向を強めたのだ。かれらは政府の中道的保護者であって、財政上のプレッシャーに直面するなか、その中道へのコミットメントを維持するために政治プログラムの改革や年金と医療関係の給付の削減にしょうがなしにではあれ取り組む意思をみせている。
疑いなしに民主党ジョージ・W・ブッシュ政権下で彼に対して暖かくも優しくもなかった。しかし、彼らは共和党の大統領とNo Child Left Behind法*11について協力し、ブッシュの減税に決定的な票をあたえ、2001年9月11日の攻撃の後には共和党と足並みをそろえ、2008年の経済危機の渦中でのブッシュ政権の金融救済でも重要な票を提供した。違いは顕著だ。
共和党のこの進化は長年にわたる共和党員の一部にとってもあまりなものになっている。ネブラスカ州の元上院議員であるチャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)はフィナンシャル・タイムズとの、債務上限引き上げバトル真っ最中の8月におけるインタビューで彼の党を「無責任」と述べた。「共和党は非常にイデオロギー的で、非常に偏狭な政治的運動に捕らわれていると思う」と彼は語った。「こんにちほどの非妥協性をアメリカ政治において見たことがない」
そしてベテランの共和党議会スタッフであるマイク・ロフグレン(Mike Lofgren)は去年、自ら苦しみながらの糾弾を書いて、なぜ彼が30年近く働いてきた議会でのキャリアを終えるのかを述べた。「共和党は議会制民主主義における伝統的な政党ではどんどんなくなって、まるで終末論的カルトのようなものになってきた。あるいは20世紀ヨーロッパの非常にイデオロギー的な権威主義的政党に」。Truthout Webのサイトで彼はそう書いている。
ウエスト下院議員が民主党共産主義者がいると批判するという脱線事故を起こす少し前、長年に渡り政治の分極化の傾向について調べてきた政治学者のケイス・プール(Keith Poole)とハワード・ロゼンサール(Howard Rosenthal)は、議会での投票についての彼らの研究から共和党は現在、この一世紀以上にわたる期間でもっとも保守的になっていることを発見したと語っている。彼らのデータは分極化の劇的な上昇を示しているが、それは主に共和党の急激な右傾化によって引き起こされている。
我々の民主主義がその健全性と生命力を取り戻すには、共和党の文化的・イデオロギー的中心が変化しなければならない。短期的には、大規模な(そしてありそうにない)投票所での共和党への大々的な拒否がなければ、それは起こらないだろう。起こりそうなのは、ワシントンのイデオロギー的分断が2012年の選挙の後に大きくなる事だ。
下院においてはまだ残っている中道そして保守的な「ブルードッグ」民主党議員*12は選挙区の再編成*13によって絶滅の危機にさらされている。一方、アラン・ナネリー(Alan Nunnelee)下院議員のような熱心なティーパティー共和党議員ですら妥協的すぎると予備選において右からのチャレンジにさらされている。そしてミット・ラムニーのレトリックやポジションには、もし彼の党がホワイトハウスと上下両院を取ったとしても彼がこれまでとは違う政治を行うということを示すものはない。
なんの主題についても両サイドから報道しようという努力を含めて主流のジャーナリスト達の価値感は理解する。しかし、バランスを欠いた事態のバランスをとった取り扱いは現実を歪めしまう。ワシントン政治のダイナミクスがすぐには変わりそうにないなら、少なくとも我々は現実が大衆に報道されるあり方を変えるべきである。
報道への我々のアドバイス:異なる見解をその中身について調べることもなしに平等に報道することでプロとしての安全を得ようとするのは止めよ。真実を語っている政治家は誰なのか?どんなリスクをもたらしながらどんな目的の為に国政を人質にしているのは誰なのか?
そして、60議席のハードルを当然とすることで上院のフィルバスターに正当性を与えるのは止めよう。この仕組みはもともと意図されていたものではないのだ。議事進行を悪質に止めているのはどの上院議員なのかを報道し、広く支持されている法案や人事をフィルバスターによって潰そうとする野党をそのたびごとにはっきりさせよ。
11月の選挙での有権者の選択のありうる帰結に眼を向けよう。候補はどういう政治をするだろうか?何を成し遂げるだろうか?(ホワイトハウスと議会が)一致したなら、共和党と民主党の政府にはどんな違いを予想できるだろうか?あるいは両党間で政府が分割していたら。
報道は政治の選択についてのある程度の理解を広めることはできても、最終的には有権者の決定にかかってくる。もし有権者イデオロギー的な過激派を投票所で罰することができ、対立者とのすべての対話と交渉を拒否すると明言する候補はダメだとみなすならば、反抗的なはぐれ者の党が中道へと戻る刺激となるだろう。そうでないならば、我々の政治が改善するまでには、更なる悪化が起こっていくことだろう。

*1:この本そのものを話題にしていない場合は出ていますが。またラジオだと、直接にこの本を対象にしてThe Diane Rehm Showに出ています。しかし本の販促で使われる事の多いOn Pointでは、この本に反論する保守派の論客が出てきたり。微妙だ。

*2:民主党のこと。

*3:ベトナム戦争を続けていたジョンソン大統領への党内の対抗馬として出てきた、1968年の民主党内のリベラル派大統領候補

*4:南部の保守的で人種差別的な民主党員。

*5:アメフトの比喩。

*6:公民権運動への民主党の支持により民主党は南部での共和党に失った。

*7:人工妊娠中絶を支持した最高裁判決。保守派はこれの撤回を求めている。

*8:固定資産税の税率上限を定めた州民からの提案で、78年に州民投票で成立した。保守派の反税金闘争の初期の成功とみなされている。

*9:延々と演説を続ける議事妨害

*10:2010年の選挙で下院では共和党が多数派となった。

*11:教育関係の法律で、ブッシュの初期の主要な政策の一つ。

*12:民主党内の保守的議員のグループの名前。その選挙区はある程度保守的である事が多いので議員も保守的なわけだが、保守的なので民主党のアクティブな支持者からはあまり好かれていないため(たとえばDailyKosでとか)、民主党大勝のサイクルでないと厳しいことになる。

*13:アメリカでは国勢調査の結果によって選挙区の再編が行われるが、新しい選挙区の線引には各地の自治体の与党が自党に有利なように決める。ブルードックは保守的な地域の議員であることが多いので、結果与党である共和党による線引にさらされがちになる。