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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

インフレ率を信用できるのか?とか、何とか...

NBERの論文を適当にみてましたら、"Japan"の文字が。なんだろうと思い読んでみたところ、日本の消費者物価指数(CPI)は利用される方法と計測誤差の為に低インフレ下においては信用できないという実証論文でした(ダウンロード制限なしバージョン)。下は論文タイトルとその要旨です。

HOW MUCH DO OFFICIAL PRICE INDEXES TELL US ABOUT INFLATION?
  by Jessie Handbury, Tsutomu Watanabe, David E. Weinstein

CPIのような公式の物価指標は場当たり的な価格の計算式を利用したインフレの不完全な指標であって、経済学者が望むようなきちんと理論的な基礎に基づいたインフレ指標とは異なったものである。この論文はそういったCPIが「真の」インフレについてどの程度正確に伝えているのかについての初めての推計を提供するものである。経済学においてこれまで用いられたうちで最大の価格と数量のデータセットを利用して、1989年から2010年までの日本についてのTӧrnqvistインフレ指標を構築する。この正しいインフレ指標とCPIについての比較は、CPIのバイアスは一定ではなく、インフレのレベルに依存することを示している。CPIの情報としての有用性はインフレと共に上昇する。計測されたインフレが低い場合(年率2.4%以下)、CPIは12か月の期間をみても正しいインフレの貧弱な推測でしかない。このレンジを超えると、CPIはインフレのよりましにはかるものとなる。アメリカのPCEデフレーターの方法は日本のCPIの方法よりも優れていたのだが、それでもまだかなりの計測誤差とバイアスがあり、その為にやはり低インフレにおいてはインフレの推測に問題のあるものとなっている。

どういう事をしているのかというと、日経が提供しているスーパーなどで販売された食料品POSデータを元に食料品についての価格指標を、Tӧrnqvistの式に基づいて計算し、それを食料品についてのCPIと比べています。なので論旨におけるCPIとは実は食料品についてのCPIです。で、詳しく解説していきますと、と書きたいところですがこの分野についてほとんど何も知ってませんので解説なんて全くできません。とにかくTӧrnqvistの計算式が理論的には良いものであるらしく、それに基づいたインフレを「真のインフレ」と呼んでいます。で、この食料品についての「真のインフレ」とCPIからのインフレの比較から、財・サービス全般のCPIの質について語っています。食料品は財・サービス全般のCPIの中で17%のシェアがあるそうなんですが、食料品は規格化が進んでいる商品なので他の主要な財・サービスと比べても価格データの計測誤差が低いとされています。つまり、財・サービス全般のCPIの質は食料品CPIよりも悪いのではないかと示唆されているわけです。以下、論文中の分かりやすい図を載せていきます。
まず、財・サービス全般についてのCPIと食料品CPIの比較(9ページのFigure 1)。
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青が食料品のCPI、赤が全般のCPI。相関係数は0.8だそうで、良く似た動きを見せています。
次がメインディッシュ、食料品についてのTӧrnqvistの価格指標とCPIです(12ページのFigure 3)。
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赤がTӧrnqvistからのインフレ率で、青が食料品のCPIのインフレ率です。これをみると、CPIによるインフレ率が0%を割ったのは95年ぐらいからですが(食料品も全般も)、Tӧrnqvistのインフレ率では93年ごろにマイナスになっています。
下の図はその二つの差、CPIからのインフレ率からTӧrnqvistのインフレ率を引いたものとなっています(14ページのFigure 5)。
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プラスはCPIのインフレ率がTӧrnqvistのインフレ率よりも高い、CPIがインフレ率を過大に見積もっているという事を意味します。マイナスの時も所々ありますが、大体においてプラスとなっています。その為、CPIによる価格水準は以下のように「真の」価格水準よりもずっと高くなっています(14ページのFigure 4)。
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1993年の価格を100とした図、青がTӧrnqvistからの価格水準、赤がCPIからの価格水準。2010年はじめにおいて、二つの価格水準は10も違っています。
上にも書きましたがこの分野の事は全然知りませんし(その上この論文の分析パートは完全に飛ばしちゃってるので(-_-;))、この食料品の価格水準についての分析から価格水準全般についてどの程度の事を言えるのか分かりませんが、非常に面白いですね。