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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

クルーグマン: 初歩だよ、ワタナベ君!

なんか東京株式市場が1000円以上急落だそうで。アベノミクスの調整局面とかなんとか適当な事が言われていますが、まあとにかく、影響の大きい事件のようでクルーグマンも自身のブログでコメントしてました。基本、金融市場の動きに説明なんかつかないよと言ったうえで、もしつくのなら日銀じゃないかと言ってますが...訳しておいてなんですが、どんなもんなんですかねぇ?
追記:一応書いておきますと、タイトルはシャーロック・ホームズの有名な「初歩だよ、ワトソン君」のもじりだと思われます*1


初歩だよ、ワタナベ君(ちょっと専門的) 2013年5月23日
さて、まずは出来のよくないジョークを謝っておこう。しかし、日経の7%の急落についていくらか演繹的な分析*2をしておくのが良いかと思った次第だ。
金融市場の大きな動きに関してまず覚えておくべき重要な事は、本質的な説明なんてものは全くないのかもしれないという事だ。私は1987年の株式市場暴落を思い出せるほど年寄りなのだが、このときは一体どういう政策の変化のせいなのかについて多くの理屈がだされた。けれど、市場が急落していく中でロバート・シラーがリアルタイムのサーベイを行う事ができたのだが、結局、彼が発見したのは売りの波について後に出されたどんな理由も事実上誰にも口にされる事はなかったという事だった。そうじゃなくて、みんながなぜ売るのかについて口にしていたのは...価格が下がっているからというものだったのだ。
それでも何か本質的な理由というものがあるとするなら、どういう手がかりを探せばいいだろうか?その答えは間違いなく、他の市場、特に債券市場と通貨市場で何が起こっているかを調べろというものだ。
三つの異なるストーリーを出させてもらおう。それぞれ日経の急落を説明しうるものだ。
1.日本とアジアの成長が弱まることへの心配。
2.日本の負債への心配。債券自警団がついにやってきた。
3.日本銀行の決意、つまり長期にわたり非常に景気拡張的な金融政策を堅持する意思についての心配。
三つとも株価の低下を説明する。しかし債券と通貨市場についてはそれぞれ異なる影響を持つ。
ストーリー1は日本の利子率の低下を意味するはずだ。弱い成長率はより長期におよぶ拡張的な金融政策を意味するはずだからだ。実際、最近の日本の株式と利子率はともに上昇していたことは、これまで我々が見ていたのは基本的に楽観論の高まりだったことを示唆する。(私や同じ考えの人達は同様の議論を、アメリカの利子率の上昇は負債への心配のせいだという主張を追い払うのに使ってきた)。しかし今回、日本の利子率は基本的に変化していない
ストーリー2ならば、我々は債券の利子率の急激な上昇を目撃しているはずだが、そうなっていない。それに、円が弱くなってもいるはずだが、実際には急激に上昇している。よって債券自警団でもない。
ストーリー3はどうだろうか?長期利子率への予期された未来の金融政策のインパクト(の方向)は不明瞭だ。日銀が引き締めに走ると予想されれば利子率は上昇するだろうし、デフレを終わらせることに失敗すると心配されれば低下するだろう。しかし日銀の決意への心配は円についてはインパクト(の方向)がはっきりしている。円を強めるはずだ。そしてそうなっている
よって、これが市場のたまにあるパニックにすぎないのでないなら、日本銀行がそう思われているほどに本当に変わったのかについての懸念が急にできてきたというもののように思われる。

*1:もっとも、実際にはホームズはこの言葉をあまり使ってはいなかったそうですが。

*2:なのでホームズ、そしてそこからタイトルの冗談につながるわけです。追記:コメント欄の個人投資家さんのコメントも参照してください。