P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

キングの幻、ハーツの市街戦ー「まぼろしの市街戦」

1966年の映画が4Kデジタル修復されてK's cinemaでリバイバル上映*1。大昔に放送されたのを観て感動した記憶に動かされて行ってきましまた。といっても先月の話なのですが。


映画『まぼろしの市街戦』≪4Kデジタル修復版≫ 予告編

第一次世界大戦中のフランスの田舎町を舞台に、占領していた町から撤退するドイツ軍が仕掛けた爆弾を解除するために英軍から送り込まれた一兵士を主人公にした映画、という紹介だとなんかシリアスなミリタリーもののような感じですが、上の予告編からも分かるように全然違います。幻想の優しさと現実の悲しさが交差する、そしてそんなタイプの映画にしては珍しく退屈せずにちゃんと観れる映画です。公開当時、一般的な人気を得たわけではないそうなのですが、アメリカでの上映でカルト的人気を得たとか。70年頃のアメリカは、ナイト・オブ・ザ・リビングデッドとかエル・トポとか、マイナー映画が若者に支持されてロングランのカルト映画になるケースがよくありますね。

前にテレビで観た時は途中からだったので実はそもそもどういう設定の話なのかよく分かってなかったのですが、それでも戦争批判の主張がはっきり伝わったのがラストシーンが非常に印象的なものだからでした。今回のリバイバル上映ではそこからまだ話が続くので、正直、鮮烈さが失われているようには感じましたが、ただ幸せさはより伝わるようになったのかも知れません。

ところで今回観て、一番印象的だったのが、サーカスが放置していったライオンの入っている檻の出入り口を主人公が開けるシーン。66年の映画なので当然ながらCGではないし、ライオンは鎖に繋がれているわけでもないし、主人公は役者さんであってサーカスでライオンに芸をさせる人でもないわけで、すっと開けた時にはライオンが出来てたらどうするんだとマジびっくりしました。でも、ライオンは出てこない。勿論、それが分かっていたからこそ開けたわけでしょうが、それはそれでなんとなく檻から出ないライオンが可哀想にも思えてきます。

あと一つ、この映画を観終わって買ったパンフレットからこの映画の原題が"Le Roi de Cœur"、英題が"The King of Hearts"と知って驚きました。キング・オブ・ハーツって、機動武闘伝Gガンダムではないか!と思ったら、なんとGガンのあのキング・オブ・ハートの元ネタがこの映画だったとは!…いや、昔WIKIPEDIAでその情報を読んで、へー、と思いながらもすぐに忘れていた事をこの映画のパンフレットを読んで映画の原題を知り思い出しました。

*1:より正確には4Kを2Kに変換したもの。