「日本SF誕生 空想と科学の作家たち」
豊田有恒著、勉誠出版
bensei.jp
日本SF作家第一世代というと、小松左京、筒井康隆、星新一、平井和正、眉村卓、半村良、光瀬龍などなどの名前が上がりますが、さすがにその登場の時期から5~60年も経つために残念ながら亡くなられてしまった方々がほとんど。その中でまだなだご健在な方の一人が、第一世代SF作家の最年少であった豊田有恒さん。実は、豊田さんは俺が好きになった最初のSF作家でした。ただまあ、ご本人がこの本で福島正実からの評価として「アイデアが良いときは読めるのだが、少しでもアイデアの質が落ちると、小説的な技巧が伴わないので、読めたものではない」と書いている通りであったため、いや、実際のところ小説の文章というより説明文を読んでいるような印象を持つことすらあったため、俺は正直、離れていってしまったわけですが...とはいえいわばSF初恋の相手であり、そしてまたこの本は豊田さんによる日本SF勃興期の50,60年代を中心にしたSF第一世代の思い出語りの本という日本のSFファンなら楽しまずにはいられない本であるために買ってみた次第。
で、この本も正直、ちゃんと構成されていないような…基本的には思いついた事をそのまま書いていっているだけのようなところがあるんですが、しかしいろいろと面白いエピソードが載っていて楽しいです。たとえば、宇宙塵主催の柴野拓美さんのお宅へ初めて豊田さんが伺う際、柴野さんが電話での道案内で「角に油屋がある」とガソリンスタンドを油屋と呼んだとか、
豊田有恒「日本SF誕生」読書中。SFマガジンのコンテストに佳作第3席となった「時間砲」を手塚治虫に漫画にしてくれとお願いしにいったら(駄目だったが)、その半月後に手塚本人が豊田さんを連れて出版社周りをしてくれたと。SFファン同士とはいえ、流石は昭和30年代だなぁ。 #sfjpn
— okemos (@okemos_PES) October 26, 2019
だとか、そしてもちろん、第一世代SF作家とのエピソード。また第一世代には含まれないものの日本SF史の中では必ずその名は目にするのに人間としては全く触れられない山田好夫さんに微かながらも触れていることとか。
あと第一回空想科学小説コンテスト佳作第一席の「地球エゴイズム」を書いた山田好夫の事に豊田さんが触れてる。といっても、二作で筆を折ったようで何も知らないと書いてるだけだが。日本SF史の中でこの山田さん、名前と作品名は出るのにそれ以外の情報は何もないからちょっと気になるんだよな。
— okemos (@okemos_PES) October 26, 2019
とにかく、第一世代SF作家のエピソードが好きな人なら読んでみて損はないのじゃないでしょうか。