P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

映画「T-34」感想

一部で「男がやってるガルパン」とか何か次元が間違っている発言を目にして気になっていた戦車映画を観てきました。

800万人が熱狂した胸アツ戦車アクション/映画『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』予告編

以前、ブラッド・ピッド主演の「フューリー」

『フューリー』予告編

を観た時にその戦車アクションにものすごく興奮しました。そしてその劇中でのアメリカの戦車に対してドイツの戦車の強いこと、強いこと。ザグからみたガンダムはこういうものかという感じ。そのガンダムをなんとかザグで倒すわけです。対して「T-34」を観ると、ロシアの戦車が強い!あ、ガンダムだと思ってたけど、実はジムだった!となるのですが、それはそれで楽しかったです。第二次世界大戦、男臭いソ連人達が悪いナチを戦車対決でやっつける映画です。ちなみに、その方向の人によるこの映画のおすすめ動画というのもあります。

映画『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』特別映像(上坂すみれがナビゲート)

アクション映画なので大切なのはどんなアクションがあるかでありストーリーではありませんから大胆に話のネタバレをしてしまいますが、劇中、冒頭と終盤の2つの戦車戦闘シーンがあり、その間が主人公達の入れられたナチスの収容所によって繋げられています。その両方でたった一両のソ連戦車T-34が数的優位を誇るドイツのパンター戦車の集団と対決します。そしてその2つの対決シーン(戦闘というより、まさに対決というべき箇所もあります)はロシアの村にドイツ軍が侵入→ドイツの村に主人公達が侵入というようなシンメトリックな変化と、男同士の同じ熱い対決によって作られています。勿論、当然ながらナチ側が圧倒的に悪い描写なのですが、そのナチ側のメインキャラクターも対決中の主人公側からのあるお願いを聞き入れて守っており、闘いを汚したりはしません。一応、戦車アクション以外の恋愛シーンもあり、ラストは恋人たちの再会で終わりますがそれも、「出会いました、終わり!」というとてもいさぎよいものでした*1。凄い傑作なわけでもないのですが、「ハンター・キラー」を観た時にも思ったように、こういう楽しいアクション映画をちょこちょこ観れていれば結構幸せなものです。

*1:なのでちょっとだけあるラブシーンが逆になぜ入っているのか疑問なくらい。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

言わずと知れたクエンティン・タランティーノの監督・脚本最新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を観てきましたので、その感想を。
www.youtube.com

時は1969年、ところはハリウッド、かつてのテレビ西部劇のスターであり今は落ち目の現状から脱却しようともがいているリック・ダルトンレオナルド・ディカプリオ)と、彼専門のスタントマン兼雑用係のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)がWセンターならぬW主人公の物語。そしてその同じ時、同じ場所には今まさにこの世の春を生きている女優シャロン・テートと、何かがおかしい集団がいて…という話。

シャロン・テートと、そしてマンソン・ファミリーが出てくる映画なわけですが、ある程度事前情報があったので、映画の結末は予想出来ました。タランティーノの最高傑作かという声もあるようですが、それもさもありなんという作品です。いろいろと素晴らしいシーンが続くのですが、中でもブラッド・ビット演じるクリフがディカプリオ演じるダルトンの豪邸から車で自分のトレーラーハウスへ帰るまでの夜の街並みを飛ばしていくシーンとかほんと美しくて素晴らしかったです。

ディカプリオとブラッド・ピットの二人は基本的にはどちらもイケメン主役俳優ではありますが、ブラッド・ピットの方がその傾向が強くてディカプリオの方が役の幅が広いですね。この映画でもその事を反映して、ディカプリオの方がコメディリリーフぽい立場から落ち目の哀愁まで人生のいろいろな面を見せる役を演じており、ブラッド・ピットの方は妻を失い*1犬と共に生きている貧しいかつての戦争の英雄の老年という役柄で、顔は齢を感じさせますが、肉体はファイトクラブの時以来のカッコよさを見せつけます。中盤、ブラピがある勘違いからマンソン・ファミリーと対峙するシーンとかまじ渋いイケメンです。

とにかく最後の展開まではほぼ完全に素晴らしいです*2。ですが、その最後の展開が、ちょっとなぁ。この展開の方向はいいと思うのですが、個人的にはそれが行きすぎ、えぐ過ぎで、ちょっとなぁとなってしまいました。戦いの暴力は(映画では)好物ですが、一方的過ぎたら虐待に感じてしまう…まあ、ここは個人差あるところでしょうが。

とはいえ、タランティーノ最高傑作と言われるのもわかる非常に楽しい作品で、お勧めです。ちなみにエンドロールも最後まで観なきゃならないタイプの作品ですので*3

*1:あるいは殺したのかもしれないという設定。

*2:それでもあえて文句をつけるとすると、ブルース・リーの扱いかなぁ。これに文句をつけている人がいるそうなのですが、まあ気持ちは分かるとは思います。

*3:といってもエンドロールも昔のハリウッドぽく短めにしあがってるので助かります。

トイ・ストーリー4

今更ながらにようやく「トイ・ストーリー4」を鑑賞。CGの素晴らしさとか、話運びがどうこうとか、いまさら言うのも野暮なので触れません。

「トイ・ストーリー4」日本版予告
トイ・ストーリー」のシリーズは良く出来たシリーズであり、言うまでもなく面白いわけです。ですが、オモチャに知性を与えるだけでなく持ち主への愛情・忠誠心もまた当然であるかのようにオモチャに付与されているのがまるで主人への愛情に満ちた奴隷のような気色の悪い設定のようで、その為に喉に刺さった小骨に対するような苛立ちがずっと感じられていたのですが、4にしてようやくそれすらも抜かれてしまいました。

オモチャ達を主人公とするエンタメという作品である以上、おそらく子供達がメインの観客と想定されていたのでしょうし(実際、俺が観に行った劇場でも子供達が多かった)、そうなればオモチャ達がその持ち主である子供達を愛しているというのは自然でありまたそうすべき設定でしょう。でも、子供もいつかは大人になるわけで、そうなれば「愛」は当然のものではないし、まして意識あるものを愛で縛り付ける、隷属させるのは自然でもない事もいつかは分かるはずの事。ましてオモチャから持ち主への忠誠など。もちろん、この作品は愛の隷属からの脱出だけが唯一の「正解」だと主張しているのではないわけですが、たとえオモチャ達が持ち主を愛するのは自然であるとしてもそれだけがあり得るべき状態ではないという事を示しているのは素晴らしい事だと思います。

そして、キャラクターのそういう成長をエンタメ作品が示せるというのは、そのシリーズが長い期間に渡って人気を保ったから出来た事であるわけで、ほんと奇跡のような事ではないでしょうか。

「町山智浩・春日太一の日本映画講義 戦争・パニック映画編」

タイトルにある映画評論家(兼アメリカ紹介者?)町山智浩さんと時代劇研究者の春日太一さん二人による日本映画、特に戦争映画、パニック映画についての対談を一冊の本にまとめたもの。面白い。

www.kawade.co.jp

なかでメインに取り上げられている作品*1については目次をコピペしまして、

  • 第二章 『兵隊やくざ』シリーズ――ブロークバック日本軍 
  • 第三章 『日本のいちばん長い日』(1967)――戦争を終わらせる戦い 
  • 第五章 『日本沈没』(1973)――黒澤組&円谷組、世紀の競演

私がこの中で観たことがあるのは「日本沈没」と「新幹線大爆破」だけですが、その他の各映画についても二人の解説が楽しくて、「日本のいちばん長い日」や「激動の昭和史 沖縄決戦」は観てみたくなりましたね(シリーズ物の「人間の条件」と「兵隊やくざ」はしんどそうなので、ちょっとまだ勘弁。)

ただ、町山さんの映画解説だとよくある事ですが、細かい事実誤認をしてたりしてます。第四章の「激動の昭和史 沖縄決戦」は、例えばアニメヲタの中でも「トップをねらえ!」においてパロられている為に少し知られていたりする作品だと思いますし、町山さんもその事を取り上げます。ですが、OVAである「トップをねらえ!」をテレビアニメ(P.162)と語っていますし、「激動の昭和史 沖縄決戦」での米艦船があまりに多すぎるシチュエーションでの台詞にオマージュを捧げている同様に敵があまりに多すぎるシチュエーションでの台詞を「敵艦で宇宙が見えません!」と引用しているのですが(P.163)、これが正確でないのは置いておいても*2、「トップ」での敵は宇宙怪獣なので「敵艦」なんてものはありません。もともとの対談中に間違えるのは分かるんですが、この本はその後に構成・校正されて出されているはずなのになぁとは思ってしまいます*3。とか書いてしまってますが、まあこの手の事はブーメランになりやすいので自戒ですね。

*1:触れられている作品は多すぎて書ききれない。

*2:第5話での「そうだ。敵の数が多すぎて、宇宙が黒く見えない。敵が七分で黒が三分。いいか。敵が七分に黒が三分だ。」

*3:あるいは出版社の河出の責任なのかな。

「守護教師」 

マ・ドンソクが主演の韓国映画。女子校教師となったマ・ドンソクが失踪した女子高生の謎を追う。
www.youtube.com

マ・ドンソクというと、
www.youtube.com
新感染での、漢はステゴロ、ゾンビははっ倒す!役が良くて気に入りまして、この映画も見に行くことにした次第。

田舎町の女子校に体育と学費未納の学生からの取り立て役として採用されたマ・ドンソクが悪徳教育者兼政治家と対決するわけです。話は基本的に簡単なものなのに、無駄に小さなどんでん返しを入れてたりしてまして、まあ、まあってところかなという作品です。
マ・ドンソク主演なので当然アクションシーンがあるわけですが、ザ・韓国映画的なアクションシーンというよりちょいハリウッドぽい感じで、それもイマイチ。でも車のサイド・ガラスが割れるシーンは少し上がりました。

「ブレードランナー証言録」

ブレードランナー2049の公開前くらいに行われた関係者へのインタビューに更に追加した4人の関係者へのインタビュー集。
www.shueisha-int.co.jp

集英社のインターナショナル文庫とかいう新書の一冊で、簡単に読める薄い本。インタビューを受けているのは

俺はブレードランナーについてそんなに詳しいわけではないので、インタビューの中で語られている事のうちどれくらいがよく知られているのか、どのくらいが知られていなかった事なのか全くわかりませんが、

とか

とか個人的には面白い情報がちょこちょこありましたね。

「最初の接触 伊藤典夫翻訳SF傑作選」

伊藤典夫翻訳SF傑作選 最初の接触」を読みました。
www.hayakawa-online.co.jp
タイトル通り、伊藤典夫さんがSFマガジンに訳された短編を集めたもの。収録作はもともと50年代発表(表題作だけ40年代)で翻訳は60年代のものばかりですが、翻訳については女性の言葉遣いがすこし昔の翻訳調かなという以外は特に古めかしい感じはしないです(もちろん当社比)。傑作選と銘打たれているだけあって、古い作品ばかりではあっても流石にみんな面白いです。

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