P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

コーエン:AD-ASモデルと垂直のAD曲線

クルーグマン1930年代のモデル(翻訳)に対するタイラー・コーエンのコメントです。本人が言うように、モデルを余りにそのまま受け取りすぎている気がします。クルーグマンはモデルは理解の為のメタファーだと割り切ってますからね。

AD-ASモデルと垂直のAD曲線  タイラー・コ−エン 2008年12月4日
ポール・クルーグマンが垂直のAD曲線を基に1930年代の簡単なモデル(翻訳)を作り、グレッグ・マンキュ−がコメント(翻訳)して、クルーグマン更なる説明を加えた(翻訳)。
私もいくつかコメントがある(続きを読むの下)...
1.1940年代、フランコ・モジリアーニ(Franco Modigliani)がこういうタイプの議論には、非常につよい流動性選好ではなく無限の流動性選好が必要だという事を明らかにしていた。こういう不連続性は、流動性に関するほとんどのモデルで問題になる。
2.モデルは、負の供給ショックは経済にとって問題ではないが、しかしダスト・ボウル*1は総産出にとって悪いものであった。おそらく、AD曲線はキンクしていて、変曲点を越えた後に垂直になるのだろう。しかし、ならばやはり我々は負の供給ショックが問題となるところへ戻る事になる。
3.モデルは、労働組合が産出を阻害しない事を示しているが、雇用を阻害しない事は示していない。そしてそれが元々の議論のポイントだったのだ。十分に高い法的に拘束力のある最低賃金は、雇用主に労働者を解雇させてしまう。ADが垂直だろうが、どうだろうがだ。多分、資本による労働の代替がおこるか、それともなにか別の理由でYは変化しないかもしれないが、雇用は下がるはずだ。
4.クルーグマンのストーリーの全体像をつかむ事が出来なくなった。彼は、ニューディール期間には、ある程度の回復がおこり(私も同意する)、財政政策はあまり景気拡張的ではなかった(同意する)と述べ、流動性の罠があったと信じていて(同意しない)、そしてだいたい垂直なAD曲線に対して正の供給ショックは産出を助けることはない(同意しない)と信じている。クルーグマンの考えを全てまとめると、ASは問題にならず、ADは全然拡張しなかった。ならば、一体何が1930年代の(部分的な)回復を引き起こしたのか?
多分、私はモデルをあまりに文字通りに取りすぎているのだろう。しかし、垂直なAD曲線がなければ、そのモデルには考えるものなどとくに何もないのだ。

*1:Google翻訳による英語wikiのダスト・ボウルの説明。http://translate.google.com/translate?u=http%3A%2F%2Fen.wikipedia.org%2Fwiki%2FDust_Bowl&hl=ja&ie=UTF-8&sl=en&tl=ja