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政治、経済、そしてScience Fiction

ジェームズ・ハミルトン:過去の不況との比較

過去の不況との比較  ジェームズ・ハミルトン2008年12月8日
先週は楽観主義者には辛い週だった。
自動車売上の恐ろしい数字に続いて、先週は全米供給管理協会(ISM)が、11月の製造業の購買担当者指標(PMI index)は36.2へと落込んだと発表した。50以下の値は、発注、製造、そして雇用の各カテゴリーについて悪化を報告した事業所が改善の報告よりも多かったということだ。過去2回の不況では、この指標は39以下に落込まなかった。

ソースFRED
ISMの非製造業の既存企業へのサーベイから作られる景気指標(index of business activity)は、11月に33.0へと落込んだ。この指標は比較的新しいので、この低さから何を読み取れるのかはよく分からない。[We don't have a long enough track record of that index to know what it requires to get a reading that low.]

ソースFRED
しかし、先週もっとも注目を集めたのは、金曜の労働統計局による、11月は53万3千人の雇用減という発表だ。0.4%の落ち込みは、28年間で最悪のもので、イアン・シェファードソンが「ほとんど形容しがたいほどひどい」と述べたような雇用状況全般の一部をなしている。にもかかわらず、デーヴ・アルティグはなんとかそれを形容しようと努力して、12月以降の雇用の低下を戦後の不況での平均と比べている。それもおそらくは、実はそれほどひどくないはないのだと形容しようとしているのだろう。

水平軸:景気の頂点からの月数。垂直軸:非農業雇用の景気の頂点でのそれとの比率。緑の線:戦後の不況の平均。青の線:2007年−2008年。ソース:Macroblog
この比較に拠れば、今回のものは平均よりは幾分わるいといった感じだ。その理由の一部は、デーヴが述べるように、戦後の平均よりすでに一ヶ月長かったからだ。もし今回のものを、戦後の最も長くそして最も深刻だった二つの不況(1973年と1981年)と比べてみると、おそらくはその時ほど悪くはないだろう。少なくとも、[今、発表されている]速報値を信じるなら。

水平軸::景気の頂点からの月数。垂直軸:非農業雇用の景気の頂点でのそれとの比率、緑は1973年11月に始まった不況、赤は1981年7月、青は2007年12月。ソース:Macroblog
しかし、それほど安心させてはくれない別の比較もある。過去の落ち込みからの脱却を助けたものの一つは、不況に対応して連銀が利子率を下げた事だ。下のグラフの青の線は、1957年、1960年、1969年、1973年、1990年、そして2001年の不況における各月のフェド・ファンド・レートの平均の動きを表している。幾分異常な1980年と1981年の不況は含めないでおいた。それらにおいては、急速に変化していたインフレ期待が重要な役割を担ったからだ。赤い線は、今回の不況でのフェド・ファンド・レートの動きを表している。連銀は利子率を他の六つの景気後退期のどれよりもすばやく、そして大きく引き下げている。

水平軸::景気の頂点からの月数。垂直軸:頂点からのフェド・ファンド・レートの変化。データソース:FRED
なぜこれが問題なのか?なぜなら、これは連銀が今回は最初から出来うる限りの事は行っているのに、それでも足りなかった事を示しているからだ。11月のフェド・ファンド・レートの平均は0.39%で、これはたとえ連銀が利子率の公式の「ターゲット」を0.5%や、なんなら0.25%まで下げたとしても、何にもならないという事を表している。過去のこのような状況において我々が常に用いてきたいつもの武器は、すでに弾切れなのだ。
もし回復がすぐに始まれば、デーヴの図はこの不況はそれほど深刻に捉えられるべきではなかった事を表していた、という事になるだろう。しかし、私には回復がすぐに始まる兆候は何も見えない。