P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

「恐怖の作法 ホラー映画の技術」

Jホラー映画における「小中理論」の小中千昭さんによる新刊。

単に人が殺されるだけのショックはあっても怖くはないホラーではない、本当に怖いホラー映画について書かれた2003年の「ホラー映画の魅力 ファンダメンタル・ホラー宣言」

を第一章、2009年に書かれたが発表される事のなかった文章を第二章、そして2014年に書き下ろされた文章を第三章として組まれた本です。「ホラー映画の魅力」はまさに如何に怖いホラー映画を作るかという本でしたが、この本はなにしろ10年以上の期間の間に書かれた文章を集めたものですから、取り扱っている題材も幅広く、ホラー映画から、アニメ、脚本について、2chのオカルト板の都市伝説、「アリス」への執着、更に第三章では「ホラーに飽きたね」というセリフまで出てきます。とかいいつつもその第三章に「小中理論2.0」が書かれていたりするわけです。

文章自体は非常に読みやすいですが、恐怖を縦糸にしつつも話自体は(そもそも書かれた時期も全然別の三つの文章がまとめられたものなので)色々な方向に向かいますから、ホラー映画についての話だけを期待するならちょっと当惑させられるかもしれません。とくに、2chのオカルト板や恐怖についての著者の考えが述べられる第二章は。とはいえそれでも、色々な映画についてや、自身が関わってきた実写やアニメ作品についての話はなかなか楽しいです。とくに、著者がserial experiments lainのシリーズ構成を担当していたというのに驚きました。いや、このlainは観た事がないのですが、最近、別のところでこのlainはこのまま観ないのだろうなと書いたところだったので、シンクロニシティを感じてしまいました。