P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

「誤解するカド」、あるいは「誤解する」んじゃなくて「誤解させている」アンソロジーの事

大森望さんと、現在(2017年5月)放送中のSFアニメ「正解するカド」の脚本を書かれている作家野崎まどさん共同の「ファーストコンタクト」テーマアンソロジー、「誤解するカド」を(だいたい)読みました。
www.hayakawa-online.co.jp

和洋合わせて10篇収録で、その最初の作品が筒井康隆「関節話法」。深夜にこれを読んで爆笑してのツイートが以下のもの。

この後で解説を読んだら大森さんが

ファーストコンタクトじゃないのでは――というツッコミなど、この小説の破壊力の前では屁でもない

と書いててまさにかと思ったわけですが、この「ファーストコンタクトじゃない」というのがこの「間接話法」だけの話ではなかったのが、この「ファーストコンタクト」テーマアンソロジーのミソだとは、神ならぬ身のこの凡人には予測のつくはずもなく...どころかそもそも異星人との接触ですらない話まであって、流石に看板に偽りありじゃないのかと思っちゃいました。未知との接触なら「ファーストコンタクト」ってことになるの?まあそれは看板の問題なので、どの作品もが「間接話法」並みなら文句も出しようがないわけですが流石にそんな事あるわけがなく、人の好みは千差万別だとはいえ、あるいはだからこそ俺には響いてこない作品も多くて。とくに筒井作品以外の現代日本SFがなんかダメで。もっともこのアンソロジーだけでなく、SFマガジンに載ってる今の日本SF作品でも響いてこない事が多いので、俺の嗜好にはなにか今の日本SFとは合わないものがあるのかもしれません。
 
まあ今の日本SFだけでなく、今回はじめてちゃんと読んだ問題作として有名なコニー・ウィルスの「わが愛しき娘たちよ」も、その世界自体にはすっと入っていけたのは良いけれど、特に何かが刺さる事がなかったわけですが。作品の終わりでテッセルが救われたのならいいけれど(寮母は没収したテッセル達をどうしたんだろう?)、この作品が扱っているのは近親相姦?父親による娘への支配がなんらかのモラルコードの裏にあるとか?正直、登場人物達の個人的なフラストレーション以上の何がそんなにショッキングなのかよく分からないのですが...30年前のアメリカのセックスコードは分かりません。
まあでも「関節話法」が読めただけでももとは取れました。