「怪奇礼賛」
19世紀から20世紀半ばまでのイギリスの怪奇小説アンソロジー。
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古い怪奇小説となると読みづらい文章をつい想像してしまいますが、これはそんな事はなくてちょっと古風な感じが味になる程度です(読みやすいとは言いませんが)。全体通して特に怖いという事もなく、また全体として特に面白いということも無いですが、個々では結構面白かったので、印象に残ったものがあったので、以下にそれらを紹介。
「塔」マーガニタ・ラスキ
20世紀半ばというこのアンソロジーの中では新し目の作品。その為か文章が読みやすくかつ終わりの切れ味が良い。
「よそ者」 ヒュー・マクダーミッド
酒場で語られるよそ者についての話。1930年代の作品らしいが、ニューウェーブにつながっていく50年代SFのような感じの作品。
「メアリー・アンセル」 マーティン・アームストロング
哀しみに心を囚われた女性の話だが、優しいオチが綺麗につく。
「谷間の幽霊」 ロード・ダンセイニ
イギリスの怪奇小説短編集「怪奇礼賛」の中のロード・ダンセイニの「谷間の幽霊」を読んだら、ものすごく水木しげるテイストだった。ロード・ダンセイニ、ファンタジー小説のビック・ネームとしか知らなかったけど、まさか水木しげると繋がるとはおもってもなかったな。まあ他は違うんだろうけど。
— okemos (@okemos_PES) 2018年5月22日
「今日と明日のはざまで」 A・M・バレイジ
ジプシーの呪いによるタイプトリップが出てくる1922年の作品だが、恐竜の出てくるシーンがちょっと怖い。
「髪」 A・J・アラン
1920年代のホラーコメディ。普通に楽しいが、オチがイマイチ分かるような分からないような。多分、当時の有名商品を皮肉ったジョークか何かを元にしているんだろうが。
「溺れた婦人」 エイドリアン・アリントン
1954年の作品だけど、出てくる幽霊が何かJホラーぽくて、これからハッピーエンドのJホラーが出来そうな話。原題はLady for Drowningなんだけど、それを「溺れた婦人」と訳したのは「溺れた巨人」とかけたかったからとかあるのかな?まあ、読みは婦人と書いて何故か「ひと」と読ませているのだけど。
「死は素敵な別れ」 S・ベアリング=グールド
1904年のこれもコメディ。著者は牧師さんだそうだけど、宗教に入れ込んでる人はウザいというところから始まる話。ぶっちゃけオチも予想がつくが、やっぱり楽しいし、100年以上前の宗教家も同じうような事を感じていたというのも嬉しい。
「オリヴァー・カーマイクル氏」 エイミアス・ノースコート
つけられている解説を読んでもいつ発表の作品かわからないのだが、1920年代か10年代なんだろうか?だけどその解説にも書かれているように、なんか現代感(というか第二次大戦後感)がある作品。
「ある幽霊の回想録」 G・W・ストーニア
1952年の作品だが、SF読者の感覚だとこれもニューウェーブっぽいよく出来た作品。