P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

「新感染半島 ファイナル・ステージ」

2016年の佳作ゾンビ映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」の4年後の楽しい続編を2021年元旦に観てきました。2次創作か~!みたいに思ったりもしますが笑、結構良く出来てる面白い作品です。
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監督:ヨン・サンホ
脚本:パク・ジュソク、ヨン・サンホ
出演:カン・ドンウォンイ・ジョンヒョン

あらすじ:ゾンビウィルによって韓国がたった1日で崩壊してから4年(ご丁寧に前作で生き残った登場人物たちが逃げ込んだ先も安全ではなかった事が作品序盤の世界設定説明でサラッと語られます)、香港に逃げ込んだ元韓国軍人ジョンソク(カン・ドンウォン)は自分の義兄を含めたメンバー達と共に崩壊した韓国国内に残された2000万ドルのドル紙幣を回収するという仕事を請負、ゾンビまみれの韓国へ戻っていく。


感想:男はゾンビとステゴロ勝負!だった前作(マ・ドンソクのイメージ強すぎw)の「新感染」*1には「ワールド・ウォー・Z」の影響が感じられましたが、とはいえ全体としては何かの映画の影響を強く受けているという印象はありませんでした*2。ですが今作はどうしても、「ニューヨーク1997」(1981)、マッドマックスの2と4などを思い出す作品になっています*3。鑑賞後に男の子二人が「ベイビー・ドライバー」の影響も云々と語っているのも耳にしましたが、それもなるほどとなりました。なんですが、じゃあそれが悪いのかというとそんな事はない。同じ韓国映画で「アジョシ」(2010)というウォンビン主演のアクション作がありましたが、あれは明らかに「レオン」(1994)フォロワーの作品。でもフォロワーの中で頭一つ抜けてそれ自体で語れる傑作でした。「新感染半島」がそこまでの傑作とは思わないですが、観て損のない作品です。ゾンビの中でのマッド・マックスは湧く!ラストのライトの中で襲いかかってくるゾンビ集団の絵がカッコいいし、しかも一瞬、え、もしかしてマッド・マックス2のラストをこの人でやるの?!と思った瞬間、あがりました!実際にはもっと優しい結末へいくわけですが、でも主人公の4年前の韓国脱出における2度のトラウマ的事件を乗り越えるにはあれが必要ですよね。

あと、良いなぁと思ったのが情けないブサイクな登場人物達も結構活きてるキャラになってるところ。勿論、全登場人物がいきたキャラクターになっているわけではないですが、主要登場人物は結構いきてる。主人公の義兄や他の主人公側の人達もそうだし、そして敵側もそう。上でアジョシを出しましたが、それはアジョシのマンソク兄弟という最低最悪にクソな悪役がクソとして魅力的だったように、この映画のファン軍曹とソ大尉という悪役も悪役として結構好きです。あと名前が思い出せないけど脚の悪い二等兵も。

それにしても、地獄となった韓国から脱出したいという願望の設定は、正直、今の韓国そんなに厳しいって事なの?と思わさせられますが、この映画のラストの女の子のセリフがそれを救ってくれようとします。でも、このセリフを口に出来ない人(きっと多いはず)には美しいセリフもなかなかにキツイなと、自身を思い返す正月元旦でした。

*1:しかし酷い邦題だなぁ。

*2:勿論、僕が無知なだけなんでしょうけど。

*3:監督によるとAKIRAの漫画版の影響、つまり崩壊後のネオ東京のイメージも入っているそうです。