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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

「悪の法則」

映画


映画『悪の法則』予告編 - YouTube

この映画ではマイケル・ファスベンダーが時折、横顔でその歯並びを見せてくれるのですが、その歯と歯茎が随分でかくて健康的というより威圧的な印象で、劇中、アーカードの旦那を思い出してしまいました。

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アーカードは吸血鬼であり、作中の地獄の中で結構、楽しくやっていくのですが、残念ながらこの映画におけるファスベンダーは悪事に手を染めてみようとしてみた単なる弁護士にすぎず、作中の煉獄の中で苦しむことになります。
監督は、リドリー・スコット。俺はリドリー・スコットの弟でもう亡くなってしまったトニー・スコットの邦題「マイ・ボディーガード」、原題 "Man on Fire"が、ダークでハードで映像が美しくて、そして贖罪の物語として哀しくて好きなのですが、そちらはメキシコを舞台とした誘拐組織との戦いの映画でした。

"Man On Fire (2004)" Theatrical Trailer - YouTube
この「悪の法則」ではメキシコの麻薬組織が出てきますので、リドリー&トニーのスコット兄弟によって俺の中ではメキシコは物凄~く怖い国認定済みです*1
 
ファスベンダー演じるリッチな弁護士は恋人のペネロペ・クルスとの幸せな結婚生活の為、更に金を稼ごうと麻薬ディーラーのバビエル・バルデムと接触して麻薬ビジネスに乗り出そうとします。その中でファスベンダーは、バルデムの愛人であるキャメロン・ディアス、麻薬の中間業者で麻薬ビジネスでのサバイバルについてアドバイスをくれるブラッド・ピット、そしてメキシコの麻薬組織と関わっていきます。その結果、ファスベンダーの全くあずかり知らないところで起こった事によってファスベンダーは煉獄を彷徨うことになります。

予告編を観て、これが陽気なエンタメ犯罪ものと勘違いする人はいないと思いますが、それでもスタイリッシュな暴力映画と勘違いする人はいるかもしれません。だから書いときますが、全然違います。ある程度の秩序と安全さを保障された世界を離れてその裏側へと、己が安全だと勘違いしたまま入っていった愚かな男たちの話です。守られた世界から外れた世界、秩序の薄皮をはがした世界の真実を見るという映画です。岩を裏返して這いずり回る虫たちをのぞいたり、傷を覆う薄皮をはがして新たに流れ出る血を見つけたりするのを楽しむような映画です。その這いずる虫たちの血の世界では、弱きもの達はほんの慰みの為に殺され、または計算に基づいて事務的に処理され、あるいは単なる間違いで殺されます。結局は安全さと秩序についての幻想を持っていた者たちは、抗えない世界の力によって翻弄されます。この映画におけるメキシコの麻薬組織は、単なる人間の集まりではないです。手下たちは一杯でてきますが、この映画においてこの「組織」とは血の世界を形作る力を意味していて、ある意味、悪魔の代理として存在しています。ファスベンダーはその悪魔のシッポを知らぬままに踏んだ事にさせられて、煉獄に落とされます。悪魔のシッポを本当に踏んだのは全く別の人間ですが、悪魔が彼の願いをかなえてくれると信じる罪を犯したのは彼でした。そしてそんな罪を犯さず、悪魔をちゃんと悪魔として認識し、世界を薄皮をはいだ状態で見つめる強き者が弱き者たちの命であがなった富をえて更なる世界の変化へと立ち向かっていくという、非常に嫌な、でもある種のエリート主義的なカッコよさの映画でした。

*1:まあ、彼らの映画以外からでもメキシコの犯罪組織の怖さは散々伝えられていますが。http://goo.gl/CVZDc2