P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

大統領選の(暫定的な)結果分析

当然ながらオバマが勝ちましたね。その勝利演説やクルーグマン等の経済学者の結果へのコメントを訳そうかなと思ってたんですが、前者はもうされちゃいましたし、後者の方もクルーグマンのものみたいにアメリカ政治好きには楽しいのだけどそうでない人にはどうか?なものとかマンキューのものみたいに気に入らないのが透けて見えるさわやかスルーとかだったので(もちろんそうでないのも色々あるはずなんですが)、やめました。個人的には、共和党内での予備選に出馬してマケインと争っていた前アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーが保守派のサイトThe Next Rightに寄せた共和党の再建を願うコメントとか、非常に興味深い。かつては民主党支持だったアメリカ南部の白人層を、人種融合を目指す市民権運動への反動として人種偏見を巧みに使いながら取り込んでいくというニクソン大統領以後の共和党の南部政策が、その成功の結果として生み出したブッシュ大統領によって挫折しついに黒人大統領を生み出すという皮肉な結果となった今、これからの共和党そして保守派全般の再建に向けての活動が非常に興味深い。というか、楽しみだ!!俺はリベラルなつもりなんですが、やはりアメリカ政治が好きな理由はそのダイナミックな変化にあるわけです。90年代クリントン政権下でのは、トークラジオやFOXニュースのような旧メディア、そしてDruge Reportのようなインターネットの大衆化初期の段階でのネット上の保守言論勢力の強大化があり、ブッシュ政権につながりました。2000年代ブッシュ政権下ではネット上でのリベラルの巻き返しが起こり、それが2006年の中間選挙、そして2008年の大統領および議会選挙での勝利へとつながりました。この順番から行くとオバマ政権下ではまた保守系言論の勢いが活発化するのかどうか?アメリカ政治好きとしてはこれからを想像すると楽しくて仕方ないのですが、とにかくその前にこの選挙の結果を見つめなおしておきましょうという事で。redbluerichpoor.comがCNNの出口調査から選挙結果について6つの分析を行っていました。そのうちの世論調査に関してを除いた5つについて下に書いておきます。
[追記:5つの分析のうち、なぜか4つが消えていましたので、改めて書き直しました。うーん、どこでどじってそんな事になったんだろう。]
1.選挙は接戦だった:オバマはマケインが獲得した数の2倍以上の選挙人を獲得したが、投票数の差は総投票数の5%位で、オバマの圧勝ではなかった。アメリカの選挙制度が州の総取りなので獲得選挙人の差は得票率の差より大きく出ます。
2.これまでの共和党候補同様、マケインは低所得層より高所得層からより高い支持を得た。
横軸は所得、縦軸は共和党の得票率です。
しかし最も所得の高い階層ではこのパターンに変化が起こった。
3.若者と高齢者の間のギャップはが大きく広がった。
横軸は年齢、縦軸は共和党の得票率です。
しかし2004年同様、期待されたような若者(30歳以下の有権者)の大規模な投票増はなかったそうです。アメリカの人口に占める若者の比率は22%なのに対して、若者票の比率は2008年の大統領選の全ての票の中で18%でした(2004年は17%)。つまり若者票のレベルの変化は無かったが、その中身が大きく変わったという事ですね。

この図はDailyKosからのものなんですが、18歳から29歳の年齢層での民主党支持率と共和党支持率の差を表したものです。80年代中は共和党優勢でしたが、90年代以降民主党優勢になり、2008年には80年代以降最大の差をつけています。有権者は若いうちの投票傾向をそのまま引きずるといわれていますから、民主党への若者からの支持が高まっている事に保守派は危機感を強めています。
4.オバマはマイノリティーから最も高い支持を得た。
黒人の96%、ラテン系の68%、アジア系の64%はオバマに投票しましたが、オバマに票を投じた白人は44%でした。2004年にケリーは、黒人の89%、ラテン系の55%、アジア系の56%、そして白人の41%から票を得ましたから、マイノリティからのオバマの得票率増加は10%近くになります。
5.共和党支持州・民主党支持州の構造は変わらなかったが、全米で民主党へのシフトが起こった。
横軸はケリーの2004年の各州ごとの得票率です、縦軸は2008年のオバマの得票率です。ケリーの得票率とオバマの得票率には明らかに正の関係があります。つまり2004年に民主党(共和党)を支持した州は2008年にも民主党(共和党)を支持したということ、つまりそれぞれの州ごとの支持の傾向は変わらなかったという事です。しかし、ほぼ全ての州が45度線の上にいます。つまりケリーと比較して、オバマへの支持はより高かったという事です。敗北したケリーに対してオバマは勝利していますから、全体としてオバマへの支持が高いのは当然ですが、重要な事はこの支持の上昇はほぼ全ての州で起こっているという事です。つまり民主党へのシフトは全米各地で起こったという事。これを非常に良く表しているのがニューヨークタイムズの下の図です。

(より詳しいニューヨークタイムズのインタラクティブマップはこちらです)
青は民主党の投票率が増えた選挙区、赤は共和党の得票率が増えた選挙区です。これによると全米真っ青です。