P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

「黄金の人工太陽」感想

「巨大宇宙SF傑作選 黄金の人工太陽」読了。
www.tsogen.co.jp
創元のアンソロジーSFの一つ。タイトル通り宇宙SFを集めたものだけど、ただこれは日本で編纂されたアンソロジーではなく、向こうで編纂されたものの翻訳。以前、「星、はるか遠く」という同じ創元のSFアンソロジーを読んだが、それは日本で編纂された海外宇宙SFのアンソロジーでとても良かった。これは過去に発表された作品の中から良いものを選んだアンソロジーなので打率が高かったんだよね。こっちの「黄金の人工太陽」の方は編者さんが宇宙を舞台にしたMCUタイプのセンス・オブ・ワンダーものが好きだという事で新作執筆をいろんな著者さん達に依頼して編まれたものなので、正直、打率はそれほど高くなかった。執筆依頼のスタートがMCUなので「社会のはみ出しもの達のダビデゴリアテの鼻をあかして活躍する楽しい短編」タイプのが多くて、それが悪いつーわけじゃないけど正直古臭い感じはしてくる。まあ正直、MCUセンス・オブ・ワンダーがあるとは僕には思えないしね*1
とはいえその中でも、宇宙に数多存在する神々の力で宇宙船が動くという「見知らぬ神々」(アダム=トロイ・カストロ&ジュディ・B・カストロ)とか、AI統治世界のおかしな仕組みと親子物の「ダイヤモンドとワールドブレイカー」(リンダ・ナガタ)、宇宙物というより幻想物っぽい「ポケットのなかの宇宙儀」(カット・ハワード)とか、よりストレートな宇宙物っぽい「迷宮航路」(カメロン・ハーレイ)とか良かったし、あとコミックっぽい「無限の愛」(ジョゼフ・アレン・ヒル)とか、それからベタだけどやっぱりラストがベタに良い「甲板員、ノヴァ・ブレード、大いに歌われた経典」(ベッキー・チェンバース)とかが良かった。

*1:勿論こういうところからして、単に「星」の方が好みに合い、「人工太陽」の方が好みに合わなかっただけとも言える。