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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

映画 「凶悪」 (ネタばれしてます)

前のポストに書いた「凶悪」の映画版を観てきましたので、簡単に。

映画『凶悪』予告編 - YouTube
映画版と書きましたけど、ノンフィクションの原作とは視点が変わっており、その為、基本原作のラインはなぞっていつつも全く別の印象の作品になっています。
で、その違いというのは、原作が罪を告白した死刑囚と「先生」の悪行を著者であり事件を調べ上げたジャーナリストが「凶悪」として弾劾し糾弾する単純な枠組みであるのに対し、映画はそのジャーナリストの執着に目を向けている事です。
映画版においては、家族の問題を抱えた、いかにもな腐ったマスコミの中で働くジャーナリストが、悪を目にした事で自分の使命に目覚めて憑りつかれます。原作にはジャーナリストのうんざりな家族も、テンプレのような「腐ったマスコミ」も(ついでに怠慢感満載の警察も)出てきません。まあ原作も、ジャーナリズムの大切さを説きつつ、目ん玉全開で悪を糾弾するものになっているので、そっちはそっちでなんだかなぁ感は感じるのですが、映画の方は「おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ」とかのたまう系の嫌な奴感を漂わせています。
まあでも、サムライ・カンフーさんも言っているように、映画の中の死刑囚と「先生」が悪行を働くシーンは観ててとても楽しいです。なのに、ジャーナリストのシーンはクソ重苦しいシーンにされている上に、事件を追及するのが楽しかったのだろうとジャーナリストを妻になじらせるし、ラストでは捕まって無期懲役を喰らった「先生」に、俺を最も死刑にしたがっているのは、恨みを持って告発した死刑囚でもなければ、犠牲者でもない、お前だとか偉そうに言わせるわけですよ。アホかと。犯罪者の追及を楽しむ事はなんら悪い事ではないし、後者の言葉を現実の死者が出ている事件に基づいた映画で言わせますかと。まあ、画面の雰囲気も演技も良いので、そのラストのシーン自体は結構いいんですけどね。
とにかく面白くなりそうだった映画に、高尚にするつもりで詰まんないものぶっこんだ映画という感じです。それでもこういうツギャが編まれたりするので、それはそれでうまい選択だったのかもしれません。
でも、個人的には勇次郎に説教してもらいたい気分です。
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