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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

ドナルド・トランプ:4兆ドルの人類への大惨事

2016年アメリカ大統領選挙 トランプ 共和党

アイオワでの共和党予備選のある2月1日までもう一ヶ月半ほどになってしまいましたが、トランプは今だに共和党員の中で人気です。
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(12月18日のRealClearPoliticsの2016 Republican Presidential Nomination)
なぜトランプが人気になのかについては前に一度書きましたが、最大の魅力はやはり普通の共和党の政治家なら、というか当たり前の政治家なら言わないような事を言うからでしょう。そこら辺をある意味、表しているのが下の図です。
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アメリカの政治報道では、政治家の発言が正しいかどうかをチェックするFact checkというのが行われてまして、この図はそのファクト・チェッカーの一人が今回の大統領選予備選候補者達と、あと有名な政治家について行ったファクトチェックの結果をまとめたものです。チェックされるのは目立っている政治家の目立った発言としてこのファクト・チェッカーに取り上げられたものだけなので、チェッカー本人が原文で書いているように統計的に云々といえるようなものではないのですが、とはいえ興味深いです。青が民主党で赤が共和党です。改めて書きますが、党の大統領候補選に立候補しているような目立っている人達の目立つ発言についてのものなので統計的に云々言えるようなものじゃないのですが、それでも一見して目につくのが共和党系政治家は民主党系政治家よりも嘘・間違いを述べる傾向があるという事です。

しかし、嘘・間違いの比率が50%以上である「政治家」6人のうち半数、ベン・カールソン、ドナルド・トランプカーリー・フィオリーナの3人は職業政治家ではなく、今回の共和党側の大統領候補選に立候補する前は政治家ではなかった人達です。残り3人は職業政治家ですが、まあ非職業政治家が共和党の嘘・間違いを悪化させるいるとは言えます。そしてトランプはワースト2で、目立った発言のなんと4分の3が嘘か間違いという惨状です。職業政治家なら流石にもうちょっと気をつけそうなところで無茶苦茶な事を言って、それで罰されるどころか逆に人気を高めていっているわけです。最近のモスリムのアメリカ入国禁止の前にも、ベトナム戦争の英雄のマケイン上院議員はベトコンに捕まってたルーザーだとか、Foxの女性キャスターへの女性蔑視的な発言とか、メキシコ移民は犯罪者とレイピストとか、メキシコ国境に大きく美しい壁を作る、人はそれを「トランプウォール」と呼ぶだろう、とかなんとか言って、その度に人気が上がる始末。トランプにはもはや「失言」と看做されえるような発言はありえないかのような状況です。ですが、そんなトランプだからこそ言える正しい発言もあるというのが面白いところで。

12月15日に行われた共和党大統領候補選候補者達のディベートドナルド・トランプが驚くほど率直かつ正しいブッシュ大統領による「イラク戦争」の評価を述べていたそうです。

いろんな連中を倒すために4兆ドルも使ったが、はっきり言って連中がまだ残っていたら、そしてその4兆ドルを合衆国内で道路や橋やその他の問題全部、空港だとかなんだとかに使っていたなら、我々はずっとましな状態だっただろう。今ならはっきりそう言える。
 
我々は甚大な被害を中東に与えただけでない。多大なる害を人類全体に対して与えてしまったんだ。殺された人々、この世から消されてしまった人たち、それは、何の為だったのか?我々は勝利を得たわけではない。中東は完全に不安定化してしまった。完全、完璧な混乱だ。この4兆ドルなり5兆ドルなりが使われなければ良かった。この合衆国内の学校や、病院や、道路や、空港や、その他全部の崩壊しつつあるものに使われていていれば良かったのだ。

民主党議員はもちろん、今では共和党議員ですら内心ではこう考えているのではないかと思いますが、思っていることをそのまま口にできないのが世の中で、ましてこれは政治の世界です。民主党議員は当然、ブッシュによるイラク戦争に批判的ですが、それでも流石にここまではっきりは言いません。言えば共和党から非愛国的と批判されるのが見えてますから。また、トランプがもし普通の共和党候補なら、今頃他の候補からアメリカを貶めたとかなんとか難癖つけられて袋叩きだったでしょうから、それを考えれば普通の共和党候補も絶対に言っているわけがない発言です。どれだけ正しくても大ぴらに述べるには政治的にアウト過ぎる発言です。しかし、どんなに差別的なり、嘘も含めて無茶苦茶で政治的に間違った発言をしてもそれを支持に転換できるトランプなら、この発言も全く問題にならない。1972年にニクソンが中国を訪問して米中和解へと関係を変化させたことについて、反共のニクソンだから中国に行けたという評価がありますが、もはや「失言」のないトランプだからこそ言える正しい発言もあるわけです。