P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

クルーグマン:私がなぜファースト・ベストの政策を諦めてサード・ベストに辿り着いたのか、あるいはすべて池田先生(みたいな人達)が悪いんじゃボケ!の巻

アシモフの翻訳をまったくサボってしまってます。すいません。いや、アシモフ先生、実は自伝の中で女子大生との不倫をサラっと告白してまして、その事に衝撃を受けたために翻訳ができなくなりました...って嘘ですけど、不倫の告白は本当です。いやぁ、非モテだったアシモフ君がそんなプチ宮台先生のようになれるなんて、おじさんうれしいなぁ!
さてそんな関係の全然ない事を書きましたが、今回もまたまたクルーグマンのブログからです。池田先生がよく「クルーグマンもリフレを捨てたんだよ、グハハッハ!」みたいな事を適当に書かれてますが、ちょうどそれについてのクルーグマンの説明のようなエントリーがアップされたので、翻訳。要するに、理論的には問題ないが、現実的には池田先生(みたいな人達)がいるから、ということですね。

このくそバカな経済 ポール・クルーグマン 2009年11月13日*1

というか、まあもうちょっとお上品にいうならこうなる:間違った考えが政策への深刻な障害になっている。
我々は流動性の罠の中にいる。利子率が0%の壁にぶち当たったままでだ。このことは伝統的な金融政策は不十分だという事を意味する。では何をするべきなのか?
ファーストベストの答え、つまり私自身の古い日本の罠(山形さんによる邦訳)のもののような経済モデルが最適だと述べる答えは、実質利子率を下げるためにより高いインフレへ信頼されるように確実にコミットすることだ。
しかしこの答えについて分かっておくべき大切な点は、期待が全てだ、という点だ。中央銀行は、流動性の罠を抜け出した後のインフレを実現するという事を人々に納得させることができてようやく期待利子率に影響を及ぼせるようになる。よってこの政策が効果を発揮するようになるには、(i)政策決定者にそれが正しい答えだという事を納得させ、(ii)十分に説得力を持たせて将来の政策決定者もそれに従うようにし、(iii)投資家、消費者、そして企業に(i)と(ii)が本当に実現したことを納得させなければならない。
現実には、我々は(i)の近くにすら来ていない。支配的な考え方はいまだに、2パーセントを超えた期待利子率期待インフレ*2のどんな上昇も悪いものだというものだ。本当は良い事である時にもだ。
この為、10年前に私が日本に対して行っていたのと同じ主張をなぜアメリカに対して今、行っていないのかと問う読者がいる。その答えは、それではなにも実現できないと私は考えるからだ。少なくとも停滞が長期に渡って続くまでは。
さてではどうすればいいのか?セカンド・ベストの答えは、本当に大規模な財政積極策だ。算出ギャップのほとんどを埋めるのに十分なだけの。これを行うべきという経済学的根拠は非常にはっきりしている。しかし、ワシントンは財政赤字恐怖症に囚われてしまっていて、十分に大きい財政出動を得る見込みはないようだ。
それ故にこの時点で、私自身はっきりとサード・ベストである事を理解しているものに目を向けているわけだ:雇用への助成とワーク・シェアの促進
制約付き最適化と呼んでくれ。そしてその制約は、間違った考えの力からやってくるのだ。

*1:原題は"It's the stupidity economy"といいます。これはクリントン大統領の1992年の大統領選挙期間中の有名なスローガン、"It's the economy, stupid!"から来ています。当時の対立候補、パパ・ブッシュことブッシュ・シニアが不景気の中、湾岸戦争の勝利と外交政策で選挙を戦おうとしていた事を揶揄したスローガンで、アメリカでは今でもそのパロディがちょくちょく使われるので説明しておきます。

*2:誤訳でした。himaginaryさん、ありがとうございます!