P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

アメリカの経済学者達による2011年を表すグラフ

BBCの集めたエコノミストによる2011年を表すグラフをhimaginaryさんが紹介していますが、アメリカの有名ブロガーのEzra Kleinがそれのアメリカ版として18人の経済学者、政策担当者、金融関係者から18枚のグラフを集めました。

なんか、楽しそうでしょ?笑 
ま、全体としてはこんな楽しいものは無いのですが、とにかくそのうち、経済学者によるグラフをそのコメント付きで載せていきます。
残りのものが気になる方はKleinのサイトへ行ってみてください。
追記:ギャグさんから"Gagnon"は「ギャグノン」だろうというツッコミがはいりましたので、修正しました。ありがとうございます。
追記2:Gagnonの発音についてhimaginaryさんからさらにコメントがありましたので、カタカナ表記を「ギャニオン」に変更しました。ありがとうございました。

ピーター・オルザグ(Peter R.Orfszag)/ ブッシュ政権下で議会予算局、オバマ政権下で行政管理予算局の局長を努め、現在はCitigroup。

第90(1967年-68年)、第100(1987年-88年)、そして第110議会(2007年-08年)という3つの時期のアメリカ連邦議員の政治的イデオロギーの分布を示した3つの図です(各議員のイデオロギーは議会での投票から測られます)。
青が民主党、赤が共和党、左側がリベラルで、右側が保守です。時間と共に両党間の乖離が大きくなっていっていくのがわかります。
コメント「今年の債務上限引き上げの議論や、これから起こる政治的麻痺について理解したければ、このグラフをみてみればいい。1960年代後半、最も保守的な民主党議員ともっともリベラルな共和党議員は中道的政策がうまくいく程度には同じように投票していた(2つの分布の重なっているところで示されている)。80年代の後半までにはこの重なりは縮小し、いまではほぼ無くなってしまった」


ラリー・サマーズ / クリントン政権下に財務長官を務めたハーバードの経済学者。ちなみに映画「ソーシャルネットワーク」に出てきたハーバードの学長が彼です(というか彼を演じている役者さんですが)。

これは1949年から2011年までの25歳から54歳の投獄されていない民間人男性のうちの働いていない人の比率のグラフで、不況のせいだけではない、70年代からの上昇トレンドを見せています。
コメント「働いていない男性の比率が4倍近くになったこと、そしてその変わりそうになさそうなトレンドが社会のあらゆる側面を変えようとしている。循環的、そして構造的な変化が合わさってパーフェクトストームとなっている」


ジャレッド・バーンステイン (Jared Bernstein) / オバマ政権下ではバイデン副大統領への経済アドバイザーとして一時期働いた経済学者。現在はCenter on Budget and Policy Prioritiesというシンクタンクのシニアフェロー。

赤線は被雇用者への給与等の支払いの対GDP比(目盛りの軸は左側)、青線は企業利益のGDP比(目盛りの軸は右側)。
コメント「企業利益は不況後に回復しただけでなく、その最高水準を超えている。そして経済における給与のシェアはずっと下がっている。この図は大きくて怖いドラゴンを表していると見られるべきだ」


ピーター・ダイアモンド / 2010年度のノーベル経済学賞を受賞した経済学者

2007年8月と2011年8月の求人と労働移動数(非農業部門で季節調整済み。2011年の数字は暫定値)。
コメント「この図は、多くの雇用が行われていること、そして毎月、それと同時に、失業率が低かった時よりも求人あたりの雇用は大きく、解雇に対する退職の比率はいまだ低いものの回復しつつあること(雇用機会の改善の印だ)を示している。求人のレベルの低さが主要な問題だと思われるが、これは不十分な総需要と大規模な財政刺激策の必要性を示している」


カーメン・ラインハート /  Peterson Institute for International Economics
ケネス・ロゴフ / ハーバード大学

コメント「青い線は国債の対GDP比の世界全体での平均、黄色は債務不履行や対外負債のリストラクチャリングに陥った国の比率を表している。時折、不履行やリストラクチャリングのパーセントよりも上にいく濃い紫は20%超えのインフレの国を表している。このグラフは政府の対外負債の不履行の波がやってきても何も不思議は無いと告げている」


ロバート・フランク / ニューヨーク大学

Toil(骨折り仕事)インデックスと名付けられたグラフで、縦軸は中位所得レベルの労働者が中位レベルの家賃を支払う為に必要な一ヶ月間の労働時間。50年代と比べると倍以上になってますね。
コメント「私はこのToilインデックスと名付けたグラフだ。これは中産階級の窮状のもっともはっきりした要素を示すために作ったインデックスで、平均的な人達が家を借りるのに必要な努力を表している」


ジョゼフ・ギャニオン (Joseph Gagnon) / Peterson Institute for International Economics

青の点線は経常収支、赤は純公的資本移動です。
コメント「中国に率いられて、発展途上国は、アメリカ財務省債券を主とする外国金融資産の政府による大規模な購入によって、先進諸国への輸出を補助する重商主義的政策を再開している。こういった純公的資本移動は彼らの通貨を、そして輸出を人為的に安く抑えて、その経常(貿易)収支の黒字を増加させている。その結果である先進諸国の経常収支赤字はヨーロッパやアメリカの弱い景気回復への重要な要因の一つだ」


タイラー・コーエン / ジョージ・メイソン大学の経済学者で、有名なブロガー

青は全要素生産性、傾きの大きい点線は1947年から73年の全要素生産性のトレンド、傾きのゆるい点線が1974年から95年のトレンド。
コメント「全要素生産性は、長く働くとか副業をするとかからではなく、イノベーションや新しいアイデアから経済がどれだけの成長を得ているかを測る試みだ。1973年以来大きく下がっていて、私はこれを「大停滞」と呼んでいる」