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P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

クルーグマン:実質残高効果(ウォンキッシュ)

ワンモア・クルーグマンです。1930年代のモデル(翻訳)で実質残高効果(ピグー効果)を無視した事についての質問が色々来ていたようで、それに答えてます。ただ、文中の数字は1930年代のアメリカのものでなく、現代のアメリカの数字、だと思います。それからタイトルの中のウォンキッシュ(Wonkish)というのは、ちょっとだけ専門用語を使ってますよ、みたいな意味です。訳すのが手間なので、そのままカナにする事にしました。
追記:残念ながら今のところあまり派手な事になってないので、今日はこれまでとします。
実質残高効果(ウォンキッシュ)  ポール・クルーグマン 2008年12月4日

さらに大恐慌経済学について続けよう。さて、これは私がなぜ実質残高効果を無視した(http://d.hatena.ne.jp/okemos/20081205/1228443877:title=(翻訳)]のかと問う人達への答えだ。実質残高効果とは、物価の下落は貨幣供給(より正確にはマネタリーベース)の実質価値を増加させて人々をより豊かにするので、もし利子率がゼロに留まっていたとしても、実質総需要を増やす事ができるのではないか、というものだ。
答えは、数字を考えてみてくれ、ということ。
教室へ行かなければならないので、記憶から語らせて欲しい。世界がおかしくなる前は、アメリカのマネタリーベースはおよそ8000億ドルだった。物価のレベルが20%下落したとしよう。これはそのベースの価値を1600億ドル増やしてくれる。さて、問題が見えてきただろうか−−住宅バブルの崩壊で6兆ドルほどの富が吹き飛んだ。それを集計物価水準のかなり過激な下落による効果と比べてみて欲しい。
しかし、これについてもう少し考えてみようか。富についての限界消費性向の推計値を少々高めの0.05としてみよう。すると、20%の物価水準の低下は消費を0.05掛ける1600億ドルで、つまり80億ドル増やす。これはGDPの0.06%だ。高めに乗数をとって2とすると、物価水準の20%の低下は総産出を0.12%引き上げる。これは私には、ほとんどゼロにみえる(That looks pretty near vertical to me.)
さらに、負債デフレの事も考えてみよう:デフレは、富を債務者から債権者へ再分配する。そしてアーヴィング・フィッシャーがそう考えたように、もし債務者が債権者よりも高い、富についての限界消費性向を持っているなら、これは小さな実質残高効果など容易に飲み込んでしまうだろう。
結論はこうだ:通常の利子率の経路がない場合、右下がりのAD曲線など忘れてしまえ。