P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

The Next Big Thing!: 次に来る金融危機はこれだ!

てな感じでアメリカのブログ界*1で噂されてるのが、クレジットカード債務です(こことかここ、あとワシントン・ポストの記事他のソース 追記:ウォール・ストリート・ジャーナルの記事)。

ま、下のグラフを見てみてください。Real wageってのは実質賃金、つまりインフレの影響を差し引いた後の賃金で、Credit card debt outstandingってのはクレジットカード債務の残高です。どちらも1999年第一四半期のレベルを100としています。


住宅ローンが複雑に証券化して訳わからん事になった末に大規模な金融問題となりましたが、クレジットカード債権もまた証券化されているそうです。金融には全然詳しくないので正直どういうことになっているのかは知りませんが、クレジットカード証券が住宅ローン証券よりも複雑な事になっていないという可能性は、どれくらいあるんでしょうかねぇ...アメリカのクレジット・カード債務は9500億ドルあるそうなんですが、上のグラフから明らかなように、賃金はその増加においついてません*2。景気が悪くなれば当然クレジットカード債務の支払いに窮する人が増えていくはずです。その影響がすでに住宅ローン発の危機で弱った金融市場にどういう影響を及ぼすのか?

ところでクレジットカード債務は実はもう既に金融危機に影響しています。今のサブプライムローン問題の原因の一つが、2005年にアメリカで行われた破産法の厳格化なんです。それ以前は、クレジットカード債務が増えすぎた人は破産を申請してそれを清算していました。とうぜんクレジットカード会社としては面白くないわけで、破産法はクレジットカード会社の陳情の結果、2005年に改正され破産するのが難しくなりました。借金はちゃんと返しましょうということで、少なくともカード会社にとっては良かった良かったとなりそうだったんですが、経済ってのは複雑な相互依存ですからね、現実は厳しい。というのは、クレジットカードの借金を返せない人達の中にどれだけローンなしの持ち家に住んでる人がいたでしょうか?ってことです。少なかったでしょうし、カードの借金を返せない人達が、住宅ローンを払えるわけはありません。以前ならカードと住宅ローンの双方を返せなくなった人達は、破産してカードの借金の方を清算し、ホームレスにならずに済むように家のローンは払うという返済パターンがとられたのですが、破産法の厳格化でこれが出来なくなりました。その結果住宅ローンを払えなくなる人達が増加して、サブプライム問題の原因の一つとなったんです。そして、クレジットカード会社には同時に住宅ローンを扱っているところも多かったのでした(クレジットカードの発行は銀行がしてますからね)。つまりクレジットカード会社が自らの陳情の結果大損するという事が起こりました。ま、払えない人から無理に金を取ろうとして痛い目にあったという自業自得なわけですが、この問題ではクレジットカードはあくまでサブプライムローン問題の原因の一つだったにすぎません。そのクレジットカードがついに自身で金融危機の主役の座をつかむ事ができるのか?乞うご期待です!(やれやれ)

*1:ブロゴスフェアっつうのでしたっけ?

*2:と断言してますが、実はちょっと疑問が。賃金の方は実質なんですが、クレジットカード債務残高の方は恐らくそうではないでしょう。これはどうなんだ?とは思いますが、どっちにしろ1999年からのアメリカのインフレ率は30%ほどですから、どっちにしろ債務の増加には追いついてません。