P.E.S.

政治、経済、そしてScience Fiction

「村西とおる 狂熱の日々」

Netflixの「全裸監督」の影響で、西村とおる監督の名を最近、目にするようになりました。西村監督といえば80年代からのバブルの時代の寵児となったAV監督。個人的にその作品を観たことはないのですが、それでも流石に知っています。その監督のドキュメンタリー映画が上映されていたので観てきました。

村西とおる 登壇!『M/村西とおる狂熱の日々 完全版』名古屋舞台挨拶REPORT
予告編がツベにみつからないので、代わりに監督の舞台挨拶を。

西村監督についてのドキュメンタリーなので、この映画自体の監督は別の人です。その監督さんが、西村監督が1996年に撮った作品のメーキングというものに出会い、それに2017年の西村監督へのインタビューを加えて出来上がったこのドキュメンタリーです。なので、西村監督の全盛期、映画のタイトルにある「狂熱」が正に当てはまりそうなバブル期が過ぎた後のドキュメンタリーです。全盛期が過ぎて50億の借金を背負った96年の西村監督がその返済の為に目論んだのが、30本以上のヘアビデオ*1とそして当時出たばかりのDVD用の4時間超のVシネの制作であり、その両方の撮影を北海道で同時におこなおうというものでした。その為の30人以上の女優さん達とVシネ用の俳優さん達を連れた北海道での撮影旅行の様子が描かれます。そして、それを含めて自分の人生を振り返る村西監督の2017年のインタビューも。

全体としての感想は、不快、なんだけれどそれを含めての人生の幅なり深みを感じる、と言うところ。ありがちな表現ですが、野原に半分埋もれた石をひっくり返して見つけた、その下に蠢く虫たちに魅入られてしまったというか。こう書くとドキュメンタリーの中の人達に対して上から目線であり、そういう態度はブーメラン的な批判を招きかねないものですが、でも正直、96年の撮影メーキングを観ていると、村西監督も含めて、何この人達?と思わないのは難しいです。まあ特にヘアビデオ撮影の方で。Vシネの方は主演女優さんの「失敗」とか、そりゃそういう事はあるんだろうな程度の事*2。ですがヘアビデオ撮影の方は、特に凄い事が起こるというわけではないのですが、村西監督のオモテウラであまりにはっきり裏返る発言なり、猫なで声から脅迫調の怒鳴り声へのスムースな移行なり、そして女優さんたちや他のスタッフの言動なり、なんというかそれぞれ低俗で観ててうんざりさせられます。その中で少しだけスッキリするのが、Vシネ側でのある配役の変更につながった怒り。あれは観ててちょっとスッキリしたんですが、でもそれはそれで哀れな事態につながる上に、その事態が起こった後にドキュメンタリーの撮影者達のイヤラシさが映し出されてこれまた気分が悪くなります。ヘアビデオの女優さん達もプロ意識があるように見えない上に、彼女たちを撮影するスタッフの側もそれ暴行じゃないのか?という様な事をした上にその事をべらべら話してるし。更に村西監督の、女優に年齢を聞いた後の見下したコミュニケーションをとるやりかたも、それに媚びる女優も。でも、映画を観ていくうちに、たとえば2017年の村西監督のインタビューなども通して、そういう不快なものたちもこの世の多様性を表しているように感じられたり…というのは綺麗事ですが、でもまあ面白い映画でした。

*1:いま聞くとなんだそれ?って言葉ですね。

*2:車が滑ったのは一つ間違えたら大事件でしたが、あれはここで不快と書いている事とは別物。